[スマートグリッドの実像に迫る!]

スマートグリッドの実像に迫る!

─第4回AMIと「STiNC」のOpenADR/SEP2.0/EHONET Lite実装─
2013/05/01
(水)

スマートグリッド時代向けの汎用ゲートウェイ装置「STiNC-200」

このような背景から、当社ではスマートグリッド時代に向けて、さまざまな製品を開発してきたが、その中でもとくに2009年7月に、インターネットを通していろいろなシステムを構築することが可能な汎用ゲートウェイ装置(STiNC-200:Standard Toko Intelligent Network Controller)を開発し、市場への提供(写真1右)を開始し、市場から大きな反響を得た。ここでは具体例として、「STiNC-200」とその新しい展開を紹介しながら、新しいスマートグリッド時代の製品動向の一端を紹介することにしよう。

写真1 新世代のSTiNCⅡ(左)とSTiNC-200(右)の外観

写真1  新世代のSTiNCⅡ(左)とSTiNC-200(右)の外観

【左】110mm(W)×35mm(H)×140mm(D)
【右】255mm(W)×35mm(H)×180mm(D)

この「STiNC-200」は、図2に示すように、将来的な自動デマンド制御機能などの拡張性や組込みソフトのバージョンアップをサーバ(クラウド)経由で可能にした、エネルギー管理用の汎用ゲートウェイ装置である。

図2 iNCのプラットフォーム

図2  iNCのプラットフォーム

STiNC-200は、スマート型システムを目指して遠隔監視制御用を行うCPUボードと、現地機器の計測や制御を行うためのセンサー通信インタフェース、それらをコントロールするソフトウェアで構成され、ソフトウェアはインターネットなどのネットワークを経由して必要に応じてダウンロードすることができるという特長をもっている。また、導入後速やかに運用が開始できるように、計測用の各種センサーを用いてエネルギー管理を行うアプリケーションソフトを標準搭載している。その他アプリケーションソフトは、システム運用ニーズに沿ってダウンロードにより追加していくことが可能である。STiNCで動作しているソフトは、遠隔地からリモートにて「更新」「削除」「起動」「停止」を個別に行うことができる。このアプリケーションソフトは、ユーザーが開発することも可能である。

従来のいわゆる専用装置と比較して、

  1. ICT技術の活用による汎用性と拡張性をもつこと
  2. 個々の現場に中央監視装置を設置することがなく、ネットワークによる遠隔監視制御に対応すること
  3. さまざまな現場の状況に合わせて必要なアプリケーションソフトを選択して取り入れることができること
  4. 関連するさまざまな装置やシステムに対してデータ連携や制御が可能であること
  5. 広域の設備を一括して管理するスケーラビリティがあること
  6. オープンな規格やソフトウェアを積極的に取り入れること(「囲い込み」をしない)

などの特徴があり、導入ユーザーに対しては、

  1. システム導入コストの低減(現地中央監視装置なし)
  2. ソフトウェア保守作業時間と費用の抑制
  3. アプリケーションソフトの拡充に沿って、1台のコントローラで複数のサービスを受けることが可能

などのメリットを提供できる。

さらに2012年7月には、このSTiNC-200の性能を大幅にパワーアップした、新型インテリジェントネットワークコントローラ(STiNCⅡ、写真1左)を市場へ投入した。

〔1〕初代「STiNC-200」の特徴

初代の「STiNC-200」は、オープンなLinux OSを採用し、パソコンやスマートフォン、携帯電話からインターネットを介して有線式/無線式のセンサー情報(電力量センサー情報や温湿度センサー情報等)の取り出しや機器の制御が行える汎用ゲートウェイ装置である。図3に、STiNC-200を用いたシステム構成例を示すが、STiNC-200は有線式センサー、無線式センサーを問わず、各種センサーからの情報をインターネット経由でサーバと通信することが可能となっている。また、携帯電話やパソコンからそれらの情報を見たり、制御できたりするようにもなっており、表1のような特徴を備えている。

図3 STiNC-200(インテリジェントネットワークコントローラ)を用いたシステム構成図

図3  STiNC-200(インテリジェントネットワークコントローラ)を用いたシステム構成図

表1 STiNC-200の主な特徴

表1  STiNC-200の主な特徴

〔2〕新世代「STiNCⅡ」の特徴

さらに、初代の「STiNC-200」を大幅に改良し性能を向上させ、2012年7月から市場に提供された新世代の「STiNCⅡ」は、「STiNC-200」と比較して、

  1. 大幅なコンパクト化(写真1)を実現
  2. CPUに「ARM Cortex A8 コア」(最大600Hzの速度に対応)や標準メモリ容量として256Mバイト(最大512Mバイト)を搭載するなど、ハードウェアを増強
  3. ミドルウェアの強化および標準ソフトウェア(エコ.Web注4)のバージョンアップ

など、多くの機能が増強されている。さらに、販売価格を低下させている。

このSTiNCⅡはスマートグリッドシステムの、

  1. デマンドコントローラ(電力の需要制御)
  2. 自動検針用コンセントレータ(AMI)
  3. 各種エネルギー管理システム(CEMS、BEMS、FEMS、HEMS)用端末

などの用途に適用できるマルチ機能をもった製品となっており、市場における幅広い用途に対応できる製品となっている。STiNCⅡを核とした適応システムイメージを、図4に示す。

図4 STiNCⅡを核としたシステムの構成例

図4  STiNCⅡを核としたシステムの構成例


▼ 注4
エコ.Web:接続されているセンサーの情報をWebブラウザから見ることができるWebサーバ・アプリケーションソフト。エネルギーの見える化とデマンドコントロールを行うことが可能となっており、デマンド(電力需要)の超過予測機能や日報作成などの機能も備えている。

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