OpenADR、SEP 2.0/ECHONET Liteにも対応したSTiNCⅡへの進化
このSTiNCⅡは、電力デマンドの重要性の増大を背景に、さらに進化発展を遂げており、最近新たに注目されているデマンドレスポンス標準であるOpenADR注5(本誌2012年11月創刊号[クローズアップ]記事参照)をはじめ、SEP 2.0注6やECHONET Lite注7標準なども搭載(2013年2月21日発表)。本格的なスマートグリッド環境に対応可能な製品へと進化させている。
そのSTiNCⅡをゲートウェイとして利用する場合の具体的なシステムイメージを、図5に示す。図5に示すシステムでは、電力の需要と供給のバランスをとるように、サービスプロバイダ側(電力会社を含む)に設置された「DR(デマンドレスポンス)サーバ」が、
- 需要家側に電力の料金情報や電力の使用抑制要請情報を発信し、
- 需要家側に設置されたゲ—トウェイ(iNC:STiNCⅡ)が、スマートハウス内の各種の電力利用機器にその情報を伝達する。
図5 iNCを核にしたOpenADR(屋外)とSEP2.0/ECHONET Lite(屋内)の会話のイメージ
〔出所 東光電気ニュースリリース、2013年2月21日〕
ところが、このような情報のやり取りの場合、これまで標準がなかったため、さまざまな方式が使用され、普及拡大していくには相互接続性が大きな課題となっていた。このようななか、DRに関して、
- 屋外のCルートあるいはBルートに関しては、OpenADRアライアンスによって、OpenADRがグローバルスタンダードとして制定され、
- これに対応する屋内(需要側)の制御の仕組みとしてSEP 2.0やECHONET Liteなどの規格が制定された。
このため、DRに関して「屋外」(OpenADR)と屋内(SEP 2.0やECHONET Lite)が標準で会話できる仕組みが可能となってきた。
そこで当社では、米国のWGN(ワイヤレスグルーネットワークス)社注8と共同でこの課題に取り組んで解決し、具体的には図5に示すように、主要構成機器間を標準的な規格で接続できるようになった。すなわち、
- DRサーバとゲートウェイ機器(iNC)間はOpenADR
- ゲートウェイ機器(iNC)と電力利用機器間はSEP 2.0、ECHONET Lite
- ゲートウェイ機器の機能向上(バージョンアップ等)が遠隔(クラウド)から対応可能
となった。これらによって、さまざまな電力利用機器の一元管理が迅速に可能になったのである。
ここまで、スマートグリッド時代に注目され出したAMIやデマンドレスポンス(DR)の動向を、当社の具体的な製品例(STiNC)で見てきた。今後このような動きは、日本だけでなく国際的な動きとなり、新しく大きなビジネス市場を創出していくものと期待されている。
(第5回へつづく)
▼ 注5
OpenADR:Open Automated Demand Response、電力を自動的に需要制御する標準。OpenADRアライアンスが提唱する電力会社と需要家の間でDR情報を伝送するための規格。
▼ 注6
SEP:Smart Energy Profile、スマートエネルギープロファイル(機能標準)。HEMSのための米国推奨の規格。SEP 1.0/SEP 1.1はZigBeeアライアンスの独自規格。SEP 2.0については、NIST(米国国立標準技術研究所)の要請のもとにWi-Fi Alliance、ZigBee Alliance、HomePlug AllianceとHomeGrid Allianceなどが合同で策定しているIP対応のオープンな規格。
▼ 注7
ECHONET Lite:エコーネットコンソーシアムの提唱するホームエネルギー管理のための規格。経産省(JSCA:スマートコミュニティアライアンス)にてHEMSと家庭内機器をつなぐ標準インタフェースとして提唱された。
▼ 注8
WGN社(Wireless Glue Networks, Inc.):米国カリフォルニア州ラフィエット市に本社をおくソフトウェア会社。さまざまな機器と通信をソフトウェア抽象化技術により制御可能にするミドルウェアを開発、ライセンス販売している。エネルギー市場では、需要側機器のデマンドレスポンスや管理・制御ソリューションを中心に、事業を拡大している。