[クローズアップ]

世界最大規模の東電・スマートグリッドシステムを「東芝」と「NTTデータ」が構築へ!

2013/06/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

東電の独自仕様と新しい仕様の違い

以上のように、スマートメーター通信システムとスマートメーター運用管理システムのパートナー事業者の選定とその役割を中心に説明してきた。ここで、東電が当初計画していた独自仕様と、前述した3原則(3つの視座)に基づいて策定されている新仕様(システム、通信、メーター、その他)を比較し整理すると、表2のようになる。

表2における主なトピックを見てみよう。

表2 東電が当初計画していた独自仕様(旧仕様)と3原則(3つの視座)に基づく新仕様の比較

表2  東電が当初計画していた独自仕様(旧仕様)と3原則(3つの視座)に基づく新仕様の比較

〔出所 東京電力2013年5月1日プレスリリース 別紙2、http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1226967_5117.html

(1)システム:国際標準を採用

①CIM:インフラ(基幹)となるシステムには、国際標準プロトコルであるIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)で策定された、電力系統と運用制御のための情報モデルであるCIM(Common Information Model、IEC61970)が使用される。

②データフォーマット:スマートメーターとヘッドエンド間のデータのやり取りのフォーマットには、国際標準プロトコルであるIEC 62056(DLMS/COSEM、前述)が使用される。

(2)通信:3方式〔無線メッシュ、携帯(1対N)、PLC)を適材適所に組み合わせて使用、基本的にIP通信を使用する。

(3)メーター:従来は分離型のみであったが、計量部と通信部の一体型も可能となった。メーターの入札方式について、従来は大崎電気工業、三菱電機、東芝(東光東芝メーターシステムズ)、富士電機(GE富士電機メーター)の国内メーカー4社による指名競争入札であったが、今後は国際競争入札(2013年10月から入札開始)となる。

なお、入札には、計量法第76条の規定に基づき日本電気計器検定所にて型式承認注6をとる必要がある(図2)。

(4)その他:メーターに新サービス向け機能を織り込み、可能な限り前倒ししてスマートメーターを設置する。

図2 メーターの型式承認試験の例

図2  メーターの型式承認試験の例

〔出所:我が国の電力量計検定制度の概要(スマートメーター制度検討会第3回配付資料、2010年7月、http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100722a07j.pdf)〕

原子力損害賠償支援機構参与のアピール

以上、2013年5月1日に東京電力から発表されたマートメーター用通信システムおよびスマートメーター運用管理システムのパートナー事業者(インテグレータ)とその役割分担を見てきた。今後、東電は、電力の自由化(2016年)に伴う電気事業分野の大きな変化への対応や、スマートメーターを活用した新ビジネスを検討するため、廣瀬直己東京電力社長直属の「新成長タスクフォース」を5月1日に新設し、2013年夏までには新事業の構想を具体化することになった。

また、今回のパートナー選定について、原子力損害賠償支援機構 参与は、原子力損害賠償支援機構に対し、『東京電力のスマートメーター導入に向けた提言』を発表(平成25年5月1日)。この提言の最後に、次のようにスマートメーターの早期設置と新サービスへの期待を強くアピールしている。

『最後に、スマートメーターの設置については、検定期間満了時の取替に加えて、希望者に対しは原則と前倒しで設置することともに、自治体等が検討するスマートシティ構想とも連携し、地域単位での一括導入を実現するなど、可能限り早期設置を目指してほしい。スマートメーターは、政府による電力システム改革の基盤となるインフラである。今後、東京電力によるスマートメーターインフラの構築及び当該インフラを用いた新しいサービスの展開がより良い方向に進むことを参与一同期待している。』(提言より抜粋)

【インプレスSmartGridニューズレター 2013年6月号掲載記事】


▼ 注6
型式承認は、大量生産される計量器に対し、検定の合理化を図るための制度。型式承認を受けた計器は、検定時に構造試験の多くを省略することができる。具体的に形式承認試験とは、メーターの有効期間中(一般家庭用のメーターの有効期間は10年)の計量器の構造などを保証するため、図2に示すように、電気的性能(電流/電圧特性)、耐久性(振動特性)、環境特性(温湿度特性)など30項目以上の試験が行われる。

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