[特集]

青森県の先進都市「弘前型スマートシティ」実現へのロードマップと全体像

2013/06/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

「弘前型スマートシティ構想」の5つの基本方針

それでは、弘前型スマートシティ構想の内容を具体的に見ていこう。

構想は2012年8月〜2013年3月の8カ月間で、構想策定委員会を中心に策定された(表2)。構想実現への基本方針は、「豊かな資源を活用した世界一快適な雪国 弘前 〜次の世代を担う子供たちが安心して活躍していけるまちをめざして〜」とし、以下の5つを基本的な考え方としている(図1)。

図1 「弘前型スマートシティ」の基本方針

図1  「弘前型スマートシティ」の基本方針

〔出所 『弘前型スマートシティ構想』より、平成25(2013)年3」月、青森県弘前市〕

表2 「弘前型スマートシティ構想」策定委員会メンバー(敬称略)

表2  「弘前型スマートシティ構想」策定委員会メンバー(敬称略)

〔出所 『弘前型スマートシティ構想』より、平成25(2013)年3」月、青森県弘前市〕

〔1〕方針1:雪との共生

これまで生活の障害であった雪を地域の資源と捉え、これを有効に活用することにより「雪の克服」から一歩進んだ「雪との共生」を目指す。

〔2〕方針2:地域資源の活用

同市には豊かな自然資源、りんごをはじめとする産業資源、弘前城や各種のまつりなどの歴史・文化資源や観光資源や、弘前大学をはじめとする学術研究資源など、先人から受け継いだ貴重な財産があり、これらの豊かな地域資源を守り、積極的に活用する。

〔3〕方針3:エネルギーの自律

地域のエネルギーを外部からのエネルギー供給に頼るのではなく、地域自身で最適なエネルギー供給体制を考え、地域でエネルギー供給をコントロールすることができる「エネルギーの自律」注1を目指す。

〔4〕方針4:市民生活の向上

市民生活におけるさまざまなサービスの連携や利便性の向上、エネルギー制御による効率的な利用のために不可欠なICTを積極的に活用し、実際に街に住む市民の目線で、市民生活の利便性と質の向上を目指す。

〔5〕方針5:地元産業との共栄

スマートシティを実現するにあたっては、地域経済の活性化のために地元の事業者を積極的に活用すること、地元の事業者が参画しやすい開かれた調達環境を整備すること、地元事業者へのビジネスチャンスを創出することを念頭に置いて進める。地元事業者と行政、住民がパートナーとなって共にスマートシティの実現を目指して「地元事業者との共栄」を図る。

以上のような方針に基づき、同市が目指すスマートシティのイメージは図2のようになる。まず、市内中心部をスマートシティ化推進地域と位置づけ、先進的なスマートシティ化を進め、雪に強い弘前型スマートシティを構築する。この推進地域は、実証モデルとして早期のスマートシティの実現を目指す。長期的には、先の推進地域で培われたノウハウを周辺市街地、さらには農村部へと拡大していくとしている。

図2 弘前市が目指すスマートシティのイメージ

図2  弘前市が目指すスマートシティのイメージ

〔出所 『弘前型スマートシティ構想』より、平成25(2013)年3」月、青森県弘前市〕


▼ 注1
弘前市の目指すエネルギーの供給体制像は、自給率を高めて地域として「自立」することからさらに進んで、地域内でエネルギーを考え、作り出し、コントロールしていくことを目指した「エネルギーの自律」としている。

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