弘前型スマートシティ構想で目指す未来=「スマートアカデミー」による人材育成 =
同構想を推進していくために、同市は「スマートシティ推進協議会」を立上げ、市民、企業(スマートシティに関わるメーカーなど)関係者の勉強や情報交換の場として定期的に開催していく。この推進協議会の運営にあたっては、環境・エネルギーの専門知識をもつアドバイザーとの密接な連携を図りながら、個別テーマごとの専門部会とこれらを束ねる部門の組織を体系的に設けて、着実にスマートシティの実現を推進し、実行する体制を構築するとしている。また、NPO や研究機関などとの連携を図り、地元の事業者が参画しやすい環境整備や地元事業者の積極的な活用をする「地元産業との共生」、地域経済の活性化につなげていく。
同構想では、未来に向けたユニークな計画もある。「スマートアカデミー」(仮称)という人材育成を図る計画だ。
「20〜30年後に40〜50歳になって市を担っていく子供たちが、自ら住みたい、活躍していきたいスマートシティを思い描き、学校を卒業後もアカデミーの仲間同士で情報交換する仲間として育ち、いずれ故郷・弘前市に帰ってきたときに一緒にスマートシティをより高度なものにしていこうと考え、取り組んでいける人材を育成したい」「極端に言えば、今から弘前型スマートシティを引き継ぐ将来の市長や商工会議所の会頭、スマートシティに関連する企業の幹部など、街づくりを牽引していくような多くの人を輩出していけるようになれば」と次世代へ受け継ぐことに期待している。
このアカデミーの講師としては、学識経験者のほか、高い知識や技能をもった市内の高齢者層の活用も視野に入れて行うという。
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「弘前型スマートシティ構想」の「弘前型」というネーミングには、地域の立地条件や気候条件の課題を解決していく目的とは別に、それらの課題を逆にうまく活用して活性化に結びつけるという意思が感じられる。
東日本大震災後の原子力発電停止状態による電力不足への危機感や、日本が化石燃料を輸入に頼っていることへの途絶危機感も含め、昨今では再生可能エネルギーへの取り組みも活発になっている。弘前市は、災害による地域孤立化の危機感を経験した中で、青森県の中でいち早く、再生可能エネルギーなどを利用した地域自律型の「弘前型スマートシティ構想」をうち立てた。
2016年からは電力の自由化が現実の動きとなり、地域独自の取り組みへの後押しともなろう。同市の構想への取り組みと実現は、青森県の他市や他県へ大きく影響することは間違いない。今後の活動に期待したい。
〔参考文献:『弘前型スマートシティ構想』、2013年3月、青森県弘前市〕
【インプレスSmartGridニューズレター 2013年6月号掲載記事】