世界初の直流対応の次世代データセンターが登場
〔1〕クラウドやビッグデータ活用の時代
次に、インターネット用のサーバなどの装置を設置・運用することに特化した、次世代データセンターの直流化の動向を見てみる。
最近、クラウドやビッグデータを利用するビジネスが活発化しているため、それらのデータ処理を行うデータセンター企業が注目を集めている。このデータセンターでは、電力を消費する機器(すなわち負荷)はコンピュータ(サーバ)が中心であり、コンピュータはもともと直流で動く装置である。そのため、電力会社から電力を交流で受けて直流に変換し、各サーバに配電して使用している。そのため、データセンターにおける電力の変換ロスが大きくなってしまうので、その対策が課題となってきた。これらの理由から、データセンターの電力を最初から直流で配電してしまおうという考え方が台頭してきた。
〔2〕直交変換(DC-AC)がしやすくなった
以前は、
- 交流から直流への交直変換(AC-DC変換)は容易
- 直流から交流への直交変換(DC-AC)は困難
であった。ところが、最近は半導体装置が非常に進歩してきたため、直交変換も容易になった。そのため、基本的には直流で給電し、どうしても交流でなければならない部分だけ、直流から交流に変換すればよくなったのである。さらに、直-直変換(DC-DC)も最近では効率がよくなったため、400V程度の高圧直流電力をサーバの動作電圧である12Vに降圧して給電することも、容易になった。
ここで、400Vを高圧直流電力というのは、エレクトロニクス分野では、回路を動作させる電圧が1〜5V程度と低圧であり、また通信設備にしても48Vで動作させており、400Vはこれらに比較してかなり高い電圧なので、高圧と呼ばれている。
以上のことから、データセンターを直流化にするメリットは、
- 変換ロスが減ること(AC電源が不要になり発熱も低減する)
- AC電源が不要となるため設備代分のコストが減ること(設備投資の低減)
- 故障しにくくなること
などが挙げられる(図3参照)。
図3 サーバの電源:AC電源が必要なく発熱低減とコスト削減を同時に実現
〔3〕データセンターの設備コストの試算
現在、各サーバでは、交流を直流に変換するための電源装置が必要になるが、非常に効率のよい装置の場合は、1台当たり2〜3万円程度する。また電源装置は故障しやすいため、冗長化(2重化)する必要があり、2台設置することになる。この場合、サーバ1台当たり4〜5万円程度が電源装置代になってしまう。サーバの価格は40〜50万円程度であるから、その10%が電源設備代となる。
例えばサーバが1ラックに40台設置されるとすると、サーバの電源設備(電源の変換ユニット)だけで5万円×40台=200万円程になってしまう。しかし、複数台の電源に対応可能な大型の集中電源注5の場合は、その10分の1の20万円程度で購入できるようになってきたため、電源設備代を大幅に削減できるようになった。
▼ 注5
交流-直流変換(AC-DC)する集中電源装置。