[特別レポート]

けいはんなデータセンターにおける 新世代のエネルギー制御システム

― エネルギー管理制御(DEMS)でデータセンター全体の消費電力を最適化 ―
2014/02/01
(土)

実証事業の背景にあるもの

〔1〕データセンターの消費電力の実状

現在、世界のデータセンターが消費している電力は原発30基分に相当し、3000万kWにもなるといわれている。グーグルやFacebookなどが所有する1拠点当たりのデータセンターの消費電力量は増大傾向にあり、これらはホットスポット(局所的な高熱源)となり、社会的な問題にもなっている。

例えば、米国グーグルの総電力消費量は260MWで、大阪大学の15倍の消費量、またFacebookの米・オレゴン州Crook County(クルック郡)のデータセンターは28MWと、この1拠点でCrook市の総電力消費量30MWに匹敵する。さらに、この隣にはアップルのデータセンターがあるので、あっという間にCrook Countyの電力消費量は4倍に膨れ上がってしまう。

一方、データセンターの電力消費の代表的な構成比を見てみると、サーバなどICT機器が50%、空調が30%、電源設備(ロス)が13%と、大きく「5:3:1」の割合になっている。ICT機器は最近ではその処理能力や容量の増大に伴い、発熱量や消費電力が増大する傾向にあり、データセンターにおける電力コストは、10年間で約8倍に増加している。

〔2〕「温度制御」から「エネルギー制御」の時代へ

2006年に米国のEPA(米国環境保護庁)は「データセンターのエネルギー消費量」に関して、2007年から2011年までの将来のエネルギー使用予測を出し、警告を発している。同時に、PUE(データセンターの電力使用効率。詳細は注7を参照)の目標値を発表し、先端技術の導入を促している注6

その結果、PUE指標で見る限り、同庁が設定したPUEの設定目標よりも早いスピードで右肩下がりに低減している。

PUEは実際のところ、空調とサーバの区切りが難しいため実電力量は見えづらい。PUEの値だけ見るとデータセンター内のエネルギー効率は一見良いように見えるが、実際には実電力が上がっているというケースも多い。このため現時点では、PUEは実(直接)電力量を見るためには意味のない値となりつつある。

「これまでのようなコストパフォーマンスではなく絶対的なエネルギー量で議論して、エネルギーパフォーマンスを追求していくことが重要となる」と松岡教授は言う。さらに「温度をどのくらいの範囲で制御するかという従来のデータセンターにおける考え方ではなく、今何W(ワット)使っているか? エネルギーを最小にするような温度は何℃か? という議論がこれからは求められる。けいはんなデータセンターにおける実証の目的はここにもある」と続けた。

データセンターの運用は、「温度制御」から「エネルギー制御」にパラダイムシフトしているのである。

国内外のデータセンターのトレンドと利用状況

それではデータセンターの利用状況はどうだろう。

安全性の確保や自社運営へのこだわりの強い日本においては、共通化されたシステムを企業が共同利用するパブリッククラウドよりも、プライベートクラウドの市場が伸びている(IDC Japan、2012年9月27日発表資料)。プライベートクラウドの場合はシステムの改造は容易であるが、電力の利用効率が悪く、維持費も高い。これらのクラウドを実際に支えるものがデータセンターである。

一方、EPRI注8の発表によれば、米国におけるデータセンターの利用状況については、アマゾンやグーグル、Facebookなどが所有するエンタープライズ系の大規模システムは全体の0.7%であるが、これらがサーバ全体の43%を運用しており、残りの99.3%のデータセンターは、病院や大学、スーパーマーケットなどにおける中小規模システム(250万箇所)で、これらはサーバ全体の57%を運用している。

前者の運用による電力消費量の効率化については、いずれも資金的にも実力もある大企業で、かつ経営的にもその効率化をせざるを得ないという環境から、おのずと対策を取り続けると考えることができる。しかし、後者が運用しているシステムについては、他者と連携してエネルギー制御していかないと、CO2は今後も多く排出し続けられることが想定される。

「これらを中小規模のシステムに、本実証実験で得られた知見(技術)を採用してもらいやすいように技術開発をしていくという点は我々アライアンスの目的でもある」(松岡教授)。


▼ 注6
IEPA Report - Data Center Energy Consumptionより。

▼ 注7
PUE:Power Usage Effectiveness、データセンターの電力使用効率。データセンターやサーバ内のエネルギー効率を示す指標の1つ。
 「PUE= データセンター全体の消費電力÷データセンター内のIT機器の消費電力」で定義される。ここでいう「データセンター全体の消費電力」とはストレージなどのIT機器だけではなく、空調・照明装置などの消費も含む。PUEが1.0に近ければ近いほど効率は良く、例えばPUEが2.0あるいは3.0となれば電力の消費効率が悪いということになる。

▼ 注8
EPRI:Electric Power Research Institute、米国電力研究所。

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