[特別レポート]

けいはんなデータセンターにおける 新世代のエネルギー制御システム

― エネルギー管理制御(DEMS)でデータセンター全体の消費電力を最適化 ―
2014/02/01
(土)

けいはんなデータセンターのシステム構成

〔1〕新たな「スーパーホットアイル」の配置

具体的なデータセンターの配置を見てみよう。

同センターの配置は、図5のように、左側がコールドアイル、真ん中がホットアイル、右側がスーパーホットアイルと3つの領域(通路)で構成され、サーバは2列のラック内に左右200台ずつ、合計400台(総電力100kW、総重量16トン)が設置されている(1ラックあたり40台設置可能)。

通常のデータセンターでは、真ん中がコールドアイル、左右両側がホットアイルという構成となっており、真ん中からの冷たい空気がサーバを経由して左右両側の通路に排出されるというのが一般的である。

図5 けいはんなデータセンター内の配置図5 けいはんなデータセンター内の配置BATT:バックアップ電池
HVDC-TR:高電圧直流用トランス
PS:電力供給システム
PDU:Power Distribution Unit、データセンター内で供給される電源を、サーバなどのICT機器に配電するための電源コンセント(電源タップ)。

しかし、同センターの構成では、左側の「コールドアイル」(写真3)からの冷たい空気(20℃〜25℃)がサーバを経由して温められて真ん中の「ホットアイル」(写真4)に排出され(35℃)、さらにその空気が右側のサーバを通って温められて(45℃〜50℃)、右側の「スーパーホットアイル」(写真5、写真6)に排出されるという、温度を段階的に上げる仕組みとなっている。

写真3 コールドアイル側にあるサーバ群(富士通製)。青いランプで区別している。写真3 コールドアイル側にあるサーバ群(富士通製)。青いランプで区別している。

写真4 ホットアイル側にあるサーバ群。オレンジのランプで区別している。写真4 ホットアイル側にあるサーバ群。オレンジのランプで区別している。

写真5 赤いランプで区分けされたスーパーホットアイルのサーバ群。写真5 赤いランプで区分けされたスーパーホットアイルのサーバ群。

写真6 赤いランプで区分けされたスーパーホットアイルのサーバ群。写真6 赤いランプで区分けされたスーパーホットアイルのサーバ群。

写真7 50℃の高温に上がった熱はこのダクトから排熱利用する。写真7 50℃の高温に上がった熱はこのダクトから排熱利用する。

写真8 コールドアイルから見たHDVC電源。右側の一番奥に設置されている。写真8 コールドアイルから見たHDVC電源。右側の一番奥に設置されている。

写真9 1台あたり56kWの電力の壁掛け方式の空調。写真9 1台あたり56kWの電力の壁掛け方式の空調。

最終的には、スーパーホットアイルからの40℃〜50℃の高温の空気は、熱回収して湿度調整(調湿)に利用する(写真7)。実稼働は2014年度からの予定である。

〔2〕ACからHVDC-12Vへ

また、これまでAC(交流)で動いていたサーバは、2013年12月18日からHVDC-12V注11に対応している(写真8)。同HVDCはNTTデータ先端技術が開発したもので(本誌2013年12月号「特集-3」参照のこと)、これにより、AC時代にはサーバ効率が10%落ちていたものが、同HVDCにした結果、5%効率がアップした。

同時に負荷に応じて供給電源の個数を変えるというダイナミック制御も採用したため、電力効率がさらに良くなっている。供給電源自体も負荷をもっているため、複数の電源をもっていると効率が落ちる。それを「使わない電源を落としてしまう」ことで、電力ロスを防げる。

〔3〕その他の構成

またサーバ群の構成の他にもユニークな試みが見られる。データセンター内の空調は、壁に設置した空調からいったん床下に空気を入れて床下から送るという「床下壁吹き出し方式」が一般的だが、この方式だと風速は早いが風量が多く取れず効率が悪いと言われている。そのため、同システムでは壁に空調を直接設置して風を送る方式を採っている(写真9)。

壁面の大きな吹出し口から低めの風速で送風することによって、送風経路の圧力損失を低くすることができ、風量あたりの送風動力を1/3に削減できる。

現在は1台の空調機でまかなっているが、最終的には2台に増設する予定である。


▼ 注11
HVDC-12V:12V方式の高電圧直流。HVDCはHigh-Voltage Direct Currentの略。

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