[特集]

九州電力のスマートグリッド戦略! ―後編―

― 共通通信基盤全体のシステム構成と今後の展開 ―
2014/02/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

スマートメーターの電文(メッセージ)フォーマット

〔1〕電文(メッセージ)の国際標準

東京電力では、DLMS/COSEM注3というIEC(国際電気標準会議)の国際標準規格(IEC 62056/EN 13757- 1標準)が使用されているが、日本におけるメッセージ形式については、現在検討中(正式な標準プロトコルは規定されていない)である。九州電力においても、電文(メッセージ)の国際標準への対応が検討されている。

〔2〕電文(メッセージ)フォーマット

図5に示すように、九州電力のスマートグリッド共通通信基盤では、さまざまなネットワークに対応したシームレスな通信を実現するため、共通の電文(メッセージ)フォーマット(アプリケーション)を規定、これを用いて通信を実施している。

図5 電文(メッセージ)フォーマット図5 電文(メッセージ)フォーマット〔出所:九州電力提供〕

スマートメーターから発信される、家庭の電力使用量(30分値)のデータ注4には、まずスマートグリッド共通通信基盤で使用される通信機器のIDや通信機器のIPアドレスなどの「共通ヘッダ」が付与される。

次に、通信管理サーバとスマートメーター間では通信方式に依存する「通信方式ヘッダ」が添付され、さらに、通信管理サーバから業務システム間の通信のために、送信プロトコルや送信元や送信先アドレスなどを記述したサーバ間ヘッダが添付される。

この電文フォーマットの一連の中身についてはセキュリティ上、公開されていない。

この方式では、例えば業務メッセージが東京電力のDLMS/COSEM方式であっても、「共通ヘッダ」でカプセル化(包み込むこと)してしまうため、DLMS/COSEM形式のデータであろうと他の形式のデータであろうと送信可能となっている。

なお、この電文フォーマットは拡張可能となっている。

〔3〕試作機を用いた通信確認試験の結果

以上のようなコンセプトのもとに、スマートグリッド共通通信基盤と試作されたスマートメーター(WiMAX方式)間で、WiMAX網を介した通信確認試験が実施されている。具体的には、図6に示すように、

  1. A:スマートメーター ⇒ 業務システム向け(片方向通信)
  2. B:業務システム ⇔ スマートメーター向け(双方向通信)

の環境で、遠隔検針業務を模擬した2つの通信試験すなわち「電文フォーマット」(パケット)の通信試験を実施したが、いずれも99.76%、99.88%の送信成功率となり、かなり高い結果を得ることができた。

このとき、例えば100%-99.76%=0.24%のパケットが到着せずに紛失しているが、スマートメーターには過去のデータが蓄積されているので、紛失した0.24%のパケットを特定してスマートメーターから再送してもらうことが可能となっている。

つまり、30分値でデータが送られるため、1日(24時間)では合計48回の送信回数となり、そのうちの1回や2回紛失したとしても、スマートメーター側のメモリ内にデータが蓄積されているので、次回の送信時に再送すればよいのである。

以上、ここまでが九州電力のAルートに関する実験内容である。

図6 試作機を用いた通信確認試験結果図6 試作機を用いた通信確認試験結果〔出所:九州電力提供〕


▼ 注3
DLMS/COSEM:IEC TC13(第13技術委員会)とDLMS UA(DLMSユーザー協会)で開発・策定された使用電力量のデータフォーマットおよび通信プロトコルの国際標準セット(IEC 62056 / EN 13757- 1標準)。このセットは、スマートメーターと電力会社の検針データ交換に広く用いられている国際規格となっている。
DLMSはDevice Langua-ge Message Specificationの略で、デバイス言語メッセージ仕様の意味。COSEMはCompanion Specification for Energy Meteringの略でエネルギー計測関連仕様の意味。
両者(DLMS/COSEM)は、DLMSユーザー協会(DLMS UA、1997年設立)で開発・保守されている標準セットで、IEC TC13で標準化が行われている。
IEC:International Electro-technical Commission、国際電気標準会議、本部:スイス・ジュネーブ、1906年設立。
TC13:Technical Committee13、第13技術委員会

▼ 注4
家庭の電力使用量(30分値)のデータ:業務メッセージ。1パケットは128バイト。1カ月約6,000パケット送信。

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