電力システム改革とxEMS普及に向けたロードマップの課題と対応
図1は、直面する電力システム改革とxEMS普及に向けたロードマップの課題と対応を示したものである。全体のスケジュールとしては、2014年度からの東京電力のスマートメーターの本格的な導入を皮切りに、各電力会社においても導入が開始される。
〔出所 経済産業省、資料〕
詳細は次の通り。
- 図1に示す技術実証に関しては、すでに2010年から、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市(京都府)、北九州市の4地域で「次世代エネルギー・社会システム実証」が行われており、いよいよスマートグリッドのキーアプリケーションとして、OpenADRなども含むデマンドレスポンス(電力の需給制御)技術の確立を目指した取り組みが行われている。
- 標準化検討では、官民による標準化検討会において、スマートメーターとHEMSをつなぐ標準プロトコルとして、ECHONET Lite(開発:エコーネットコンソーシアム)を2012年2月に決定した。さらにその下位層の通信方式も決定され、機器がつながる環境が整備された(2013年5月)。また、2013年10月にECHONET LiteはIEC TC100注2で国際標準となった。ECHONET Liteと米国のSEP 2、欧州のKNXなどの規格と融合・連携も検討されている。
- 導入補助については、すでにHEMS・BEMS補助金制度などによって、例えばHEMSの場合には9万台の導入で、約110億円のHEMS市場が創出されるなど、一定の効果を収めている。さらに新しくスマートマンション導入加速化推進事業(平成24年度補正予算:130.5億円)によって、MEMSの新市場の創出が期待されている。今後、各種EMS機器のコストダウンや各種アグリゲータの育成が期待されている。
- xEMSに留まらないビジネスの拡大については、各家庭やビル、マンションなどからのエネルギー利用に関するデータを利活用した、新ビジネスの創出が期待される。これによって、電気の小売分野に参入するプレイヤーの次世代エネルギー管理ビジネスの確立が期待されている。
以上のような民間主導による、エネルギー管理システムの普及によって、電気の小売市場への新規参入が活性化すると見られている。
電力会社におけるスマートメーターの情報提供の開始時期
このような電力自由化という大局的な流れの中で、電力会社はスマートメーターを設置していくが、スマートメーター本来の情報は、いつから提供されていくのであろうか。
表1は、実際に提供される電力各社の低圧(50kW未満:一般家庭)用スマートメーターの情報提供ルート対応の開始時期を示したものである。この時期までは、一般家庭に設置されたスマートメーターは、スマートメーターとしてではなく、従来のアナログメーターと同じ動作となる。
表1の左側は、電力会社のAルート注3対応開始時期であり、スマートメーターの検針値を電力会社のMDMS(メーターデータ管理システム)まで自動で収集し、一般家庭(顧客)に「見える化サービス」が提供可能となるとともに、料金システムに連携して料金算定データとして使用可能となる時期である。
表1の中央は「Bルート注4対応開始時期」である。すなわち、顧客からの個別の要望に応じてBルート対応が可能になる時期である。
各社ともHEMSなどに対して、比較的円滑にリアルタイムでの情報提供が可能な「Bルート」への対応を優先的に進めている。
〔出所 経済産業省、資料〕
▼ 注1
2014年4月から導入開始予定。
▼ 注2
具体的にはIEC TC100 TA9(Technical Area 9)において、プロジェクト番号IEC 62394として標準化(TA9はAudio, video and multimedia applications for end-user networkを担当)。
IEC 62394:http://webstore.iec.ch/Webstore/webstore.nsf/Artnum_PK/48660
▼ 注3
Aルート:需要家が契約した電力会社経由で電力使用情報を取得するルート。
▼ 注4
Bルート:需要家が自宅のスマートメーターから直接電力使用情報を取得するルート。