[特集]

IBMの新電力ビジネス戦略!規制緩和後の新しい展開と課題 ≪前編≫ ─ スマーター・シティーへの取り組みと4つの業界モデル ─

2014/03/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

スマーター・シティーの事例:データアグリゲーション

〔1〕メーカーに依存しないオープンなBEMS/HEMSシステム

同社では、スマートグリッド関係においては、現在、スマートエネルギーの領域で、特にHEMSやBEMSのアグリゲータとして各企業と協業している。

例えば、イオンディライトやタマホーム、積水ハウスとともに経済産業省の実証に参画し、BEMS/HEMSアグリゲータとして効率的な節電や省エネ、需要応答(デマンドレスポンス)のアプリケーションを双方でつくっていくということを行っている(図4)。

図4 BEMS/HEMSのデータアグリゲーション図4 BEMS/HEMSのデータアグリゲーション

IBMはこのアグリゲータ実証で各企業と協業しているが、ここでの一番の特色がBEMS/HEMSの機器メーカーに依存しないシステムを構築している点にある。HEMSやBEMS経由で収集されたデータは、需要家の許諾を得たうえで、それらのデータを使って新しいビジネスを展開しようとする顧客(ここではイオンディラントやタマホーム、積水ハウスなど)に対して、セキュリティ確保・認証後、データを開示して新しいビジネスモデルをつくり上げてもらうということを実証している。

イオンディライトにおいては、イオンの各店舗から上がってくるデータを、これら各店舗のビル管理はイオンディライトが行い、新しいビジネスモデルをつくっていく。

またタマホームや積水ハウスなどのハウスメーカーにおいては、家を販売する際の1つのツール、あるいは1つの付加価値として、すでにHEMSを標準装備していくということが考えられている。特定のHEMSやBEMSだけしかつながらないということであると、将来的なコストの観点や拡張性において問題が出る可能性もあるため、どのような機器であっても接続可能なクラウド・インフラをつくり、各BEMS、HEMSの提供者とアグリゲータとともに、ビジネスを進めている。

〔2〕実ビジネスで実施

すでに積水ハウスと日本IBMはこのビジネスにおいて提携し、この実証内容を使って積水ハウスは、新しいビジネスとしている。

また、2013年、IBMプラットフォームと連携した対話型HEMS「あなたを楽しませ隊」もを開発し、運用を開始している。これは、エネルギー情報を「わかりやすく・楽しく」見える化し、HEMSメーカーに依存することなく、「家」と「需要家」の情報を一元管理して、そこで収集されたデータをもとに、外部のサービスプロバイダが新しいビジネスを行っていくという実ビジネスを展開している(図5)。

図5 対話型HEMS「あなたを楽しませ隊」図5 対話型HEMS「あなたを楽しませ隊」〔出所 http://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2013/10/15/20131015_4.pdf

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