[プロダクト]

Wi-SUNインタフェースを搭載したスマートメーターの測定技術

― 920MHz帯を使用するIEEE 802.15.4gの最新動向 ―
2014/04/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

ECHONET Liteの下位層通信インタフェース920MHz帯無線(JJ-300.10)の場合

次に、TTCで策定された下位層通信インタフェースを使用して、具体化されている、3つの下位層通信インタフェースの例について説明する。

〔1〕3つの通信インタフェース:方式A、B、C

図3に、ECHONET Liteの下位層通信インタフェース〔920MHz帯無線(JJ-300.10)の場合〕を3つ示す。

図3 ECHONET Liteの下位層通信インタフェース【920MHz帯無線(JJ-300.10)の場合】図3 ECHONET Liteの下位層通信インタフェース【920MHz帯無線(JJ-300.10)の場合】
〔出所 アジレント・テクノロジー、「Agilent Measurement Forum 2013 最新動向を考慮したスマートメーターの測定技術」より〕

図3に示す「方式Aと方式C」の2つは、エコーネットコンソーシアムとWi-SUNアライアンスから提案され整理された通信インタフェース規格であり、「方式B」はエコーネットコンソーシアムとZigBeeアライアンスから提案され整理された通信インタフェースである。ここで、図3の右端に示す「方式C」は、第2層のMAC層の上に、直接アプリケーション層を乗せて動作させる(中間のプロトコルを省略した)方式であることに留意されたい。

アジレント社は、Wi-SUNアライアンスに参加しているため、図3の「方式A」と「方式C」が対象となる。これに対して「方式B」は、IPv6+RPL注2というようにRPL(リップル)というルーティングプロトコルを追加した構成となっている。

両者の大きな違いの1つとして、「方式B」はこのRPLの追加によって、メッシュ型(網の目状)ネットワークが組める仕組みとなっていることである。これを逆に言えば、「方式A」と「方式C」はメッシュ型ネットワークではなく、スター型のネットワーク接続になるということである。

〔2〕「ECHONET Lite over ZigBee IP」

一方、前述したように、省電力化と高速化を実現した新しい標準として、MAC層に802.15.4e、物理層に802.15.4gというプロトコルが標準化されたため、ZigBee IP上で、図4に示すSEP 2注3と類似の機能をもったECHONET Liteも同時に動作させるために、「ECHONET Lite over ZigBee IP」(TTC JJ-300.10方式B)が、ZigBeeアライアンスから提案された。

図4 ECHONET Lite over ZigBee IP【TTC JJ-300.10方式B】
図4 ECHONET Lite over ZigBee IP【TTC JJ-300.10方式B】
〔出所 アジレント・テクノロジー、「Agilent Measurement Forum 2013 最新動向を考慮したスマートメーターの測定技術」より〕

〔3〕ECHONET Lite over Wi-SUN(with or without IP)

さらに、図5にWi-SUN上(IPまたは非IP対応)でECHONET Lite(あるいはSEP 2)などを動作させるため、ECHONET Lite over Wi-SUN(with or without IP)という方式が開発された。

図5 ECHONET Lite over Wi-SUN(with or without IP)【TTC JJ-300.10方式A/C】
図5 ECHONET Lite over Wi-SUN(with or without IP)【TTC JJ-300.10方式A/C】
〔出所 アジレント・テクノロジー、「Agilent Measurement Forum 2013 最新動向を考慮したスマートメーターの測定技術」より〕

図5では、図中に「Wi-SUNネットワーク層(Wi-SUN NWK)」が定義されているが、これはトランスポート層の「UDP/IDP」、ネットワーク層の「IPv6/IPv4、6LoWPAN」を包含した形で構成されている。なお、図5の方式AはIP対応で、方式Cは非IP対応となっている注4

〔4〕ECHONET Lite用920MHz無線:JJ-300.10の物理層(PHY)の設定値

次に、表3に、ECHONET Lite用920MHz無線に関するTTCのJJ-300.10の物理層の代表的な設定値(パラメータ)を示す。これは、920MHz帯でIEEE 802.15.4g環境で動作する場合の設定値の例である。IEEE 802.15.4g規格の中には、多くのオプション規格があるため、表3は、その中から代表的なものを選択し示している。

表3 ECHONET Lite用920MHz無線の物理層パラメータ【JJ-300.10のPHYパラメータ】
表3 ECHONET Lite用920MHz無線の物理層パラメータ【JJ-300.10のPHYパラメータ】
〔出所 アジレント・テクノロジー、「Agilent Measurement Forum 2013 最新動向を考慮したスマートメーターの測定技術」より〕

実際には、TTCのJJ-300.10で物理層の設定値(パラメータ)について、方式A、方式B、方式Cなどが規定されているが、パラメータの例は次の通りである。

具体的には3方式とも、伝送速度が100kbps、送信電力は20ミリワット(mW)、チャネル間隔は400kHz幅で、変調方式は2GFSK(2値のGFSK)で、誤り訂正符号(FEC:Forward Error Correction)は「なし」で、ホワイトニング(データに乱数をかけてスクランブルすること)は「あり」である。PSDU(Physical Layer Service Data Unit、物理層が扱うデータ単位)の長さは、規格上は2,047オクテット(バイト)まで使えるが、255オクテットまでとしている。パケット送受信時に同期をとるために使用されるプリアンブル(同期用の信号)は、規格上4オクテットであるが、少し長目の15オクテット以上が推奨されている。

アジレント社のように、計測用のアナライザを扱っている計測メーカーは、表3に示す方式A、方式B、方式Cの各種物理層のパラメータなどを測定する機器を提供することになる。IEEE 802.15.4gについては、日本向けには50kbpsと100kbpsの両方が必須の伝送速度となっている。

同社からは、主に物理層の測定器が提供されているが、市場からの要求もあるため、同社が統括する形で上位層のプロトコル層を含むテストソリューションも提供されている。その理由は、JJ-300の物理パラメータは、方式A、B、Cについては表3に示すように、すべての項目に関してほぼ同じであるが、物理層から上位のプロトコル層、すなわちMAC層以上のプロトコルは方式によって変わってくるからである。現状で提供されているプロトコル層のソリューションとしては、方式Aのみに対応しており、その他については、今後拡張されていく予定となっている。

この理由は、同社はWi-SUNアライアンスのWi-SUNの認証試験システムとして作成しているため、結果としてWi-SUNアライアンスで現在、テスト仕様が作成されているものに限定して対応することになるからである。現状では、方式Aの規格しかないため、他の方式には対応できていないということである。


▼ 注2
RPL(リップル):IPv6 Rout- ing Protocol for Low power and Lossy Networks、低消費電力でパケット損失が発生しやすいネットワーク環境(例:非力なセンサーネットワーク)の下における、IPv6ルーティング(経路制御)・プロトコル。マルチホップルーティング機能(メッシュ型機能)もサポートしている。

▼ 注3
SEP 2:Smart Energy Pro-file 2、ホームネットワークなどにおけるIPベースの制御用の標準アプリケーションプロファイル(機能標準)。ZigBeeアライアンスが中心となって開発された。例えば、スマートハウスにおけるデマンドレスポンス(電力の需給制御)や負荷制御(家電やエアコン等の制御)、電力料金の課金、見える化、さらに電気自動車の充電管理などを行う。

▼ 注4
現実的には方式Cは使われておらず、方式Aが日本で主流となると思われる。

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