電力の全面自由化前夜:自由化のはじまり
〔1〕電力の小売市場の自由化
日本における電力の小売市場の自由化は、これまで図1に示す、第1次から第4次にわたる電気事業の制度改革を受けて、図2に示すように進められた。
- 2000年3月から:契約電力2000kW(電圧2万V)以上の〔特別高圧産業用〕を使用する大規模工場や、〔特別高圧業務用〕を使用するデパート、オフィスビルなど、大口ユーザーから自由化が開始された。
- さらに、2004年4月から契約電力500kW以上2000kW未満の高圧〔B〕を使用する中規模工場や〔高圧業務用(500kW以上)〕を使用するスーパーや中小ビルが自由化され、
- また、2005年4月からそれより小口の契約電力50kW以上500kW未満の高圧〔A〕を使用する小規模工場や〔高圧業務用〕が自由化された。
そして、いよいよ2016年から、契約電力50kW未満の低圧(電圧600V以下)を使用するコンビニエンスストアや事業所、100〜200Vの〔電灯〕を使用する一般家庭などが自由化される予定(図2下段のピンク部分)となっており、これによって日本の電力小売市場の自由化は完了する。
図2と図3からわかるように、日本の電力小売市場は、50kW以上を使用する電力量が全体の60%を占め、50kW未満のコンビニエンスストアや一般家庭の電力量が40%を占めている。
このような電気事業法の改正に伴う自由化の波を背景に、これまで地域独占体制でビジネスが規制されてきた一般電気事業者(東京電力や関西電力など10社)は、地域を越えて電力を供給し、ビジネスを展開することが可能となった。また、経過措置はあるものの、現行の料金規制は撤廃され自由な料金設定が可能になる。
〔2〕九州電力に次いで中部電力、関西電力が域外供給
このように2000年3月から開始された電力の規制緩和(電力の小売自由化)によって、九州電力が全国で初めて、2005年11月から従来のサービス地域を越えて、中国電力管内にあるジャスコ宇品(うじな)店(広島市。現イオン宇品ショッピングセンター)に、電力の域外供給を開始して大きな注目を集めた。九州電力は、中国電力の送配電網を利用して、ジャスコ宇品(うじな)店に電気を送る「電力の小売託送制度」(託送供給約款注1)を利用して行っている。
その後、政府による電力自由化の方針が明確になったことや、2020年に向けた東京オリンピックの開催など、今後、首都圏におけるビジネスの拡大が見込まれることなどから、中部電力は2013年8月、三菱商事の子会社である新電力「ダイヤモンドパワー」(東京都中央区)を買収し、東京電力の営業管内である首都圏を対象に電力の販売事業を始めることを発表した。
(http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3225133_ 6926.html)
これに続いて、関西電力の100%子会社の関電エネルギーソリューション(Kenes)は、顧客へ供給する電力の調達や電力供給の市場ニーズの把握を進めてきた結果、電力の買取や卸電力取引所(JEPX、後述)からの調達によって、当面の電力供給力を確保するなどの準備が整ったため、2014年4月1日から首都圏において電力供給事業を開始することを発表した。
〔3〕新電力は201社へ
このように、2016年から開始される、コンビニエンスストアや一般家庭を含む電力小売の全面自由化に向けた、既存の電力会社による首都圏での電力販売競争は、新しい電力市場でのビジネスを活発化させており、2014年4月11日現在、新電力会社は201社に達し、その業種は、電力会社、エネルギー会社、自動車会社、ハウスメーカー、家電メーカーなど、多彩な業種が次々に名乗りを挙げている。
▼ 注1
小売託送制度 http://www.energia.co.jp/elec/free/consign/summary.html