[特集]

IoTを活用しVPP(仮想発電所)を目指すデマンドレスポンスと分散エネルギー資源の統合

― 新ビジネスに向けて「ERABフォーラム」と「ERAB検討会」がスタート ―
2016/05/09
(月)
SmartGridニューズレター編集部

VPPに関する構築事業費補助金

〔1〕2016年度の予算案額は29.5億円(新規)

 政府は、図6の下段に示すように、5カ年計画でVPPを実現するため、2016年度の予算案額として29.5億円(新規)を計上した。

〔2〕VPP構築事業の内容

(1)事業の目的と概要VPP事業では、系統電力網上に散在する、

  1. 再生可能エネルギー発電設備
  2. 蓄電池などのエネルギー設備
  3. デマンドレスポンス

など需要家側の取り組みを統合的に制御し、あたかも1つの発電所(仮想発電所)のように機能させる実証事業を実施する。

 このような創エネ、蓄エネ、省エネを最適に組み合わせることによって、再エネの導入拡大、さらなる省エネルギーや負荷の平準化を図る。

(2)VPPが目指す成果目標

  1. 平成28(2016)年〜平成32(2020)年の5年間の事業を通じて、50MW以上のVPPの制御技術の確立などを目指し、さらなる再生可能エネルギー導入拡大を推進する。
  2. また、節電した電力量を売電できる「ネガワット取引市場」〔平成29(2017)年までに創設予定〕における取り引きを見据えた、アグリゲータの機器制御技術の高度化を図る。

〔3〕事業イメージ

  • 事業例①:蓄電池などのエネルギー設備を活用したビジネスモデルの確立
  • 事業例②:高度制御型デマンドレスポンスの実現

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/001_03_00.pdf

 以上、活発化する分散エネルギーの導入とデマンドレスポンスの実証試験などを見ながら、エネルギー資源を統合してVPPを実現し、新アグリゲーション・ビジネスが展開されようとしている。

 日本における電力小売全面自由化は、これらの動きと連携して今後が本番になっていくと考える。また、日本のVPPビジネスがどのように展開されていくのか、大きな期待が寄せられている。

◎Profile

石井 英雄(いしい ひでお)

石井 英雄(いしい ひでお)

早稲田大学 研究院教授 博士(工学)、スマート社会技術融合研究機構 事務局長、先進グリッド技術研究所 上級研究員

1988年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、東京電力(株)入社。
1989〜1991年、マサチューセッツ工科大学客員研究員。
2010年〜、再生可能エネルギー導入、デマンドレスポンスの標準化等の国家プロジェクトを推進。
2013年10月〜、ADRアソシエーション代表理事(兼務)。2013年7月〜2014年6月、東京電力(株)技術統括部部長代理兼スマートグリッド戦略グループマネージャー。
2014年7月より現職。

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