インダストリアル・インターネット革命
インダストリアル・インターネット(産業用インターネット)という言葉は、国際的にいろいろな名前で呼ばれており、例えば、日本ではIVI(Industrial Value Chain Initiative)、ドイツではIndustrie 4.0、米国ではCPS(Cyber Physical System)と呼ばれているが、すべて同じことを意味している。
〔1〕歴史的な3つの革命的な変化
図2の左に示すように、これまで産業分野では3つの大きな革命的な変化があった。
図2 インダストリアル・インターネットによる次世代の経済革命
出所 IIC Dr. Richard Soley「Welcome to the Industrial Internet Forum」、慶應義塾大学、2016年6月3日
第1は、18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命であり、蒸気機関の開発などによって鉄道などの発明も行われた。これによって人的パワーが機械に置き換わり、雇用の損失とともに新しい雇用の創出も行われ、生産性(1人当たりのGDP)は2.5倍〜4倍も向上した。
第2は、20世紀の後半にインターネット革命が起こった。インターネット革命は人と人の直接的なつながりが、パソコン(機械)同士の接続に置き換えられた。これによって、インターネットをベースとした事業活動によって事業が効率化され、電子商取引だけでなく、あらゆる業務について電子化が推し進められ、「e-ビジネス」が展開されるようになった。
これによって、エンターテインメントの業界は大きく変化し、例えば、音楽をCDの形態で買う人が少なくなり、ダウンロード購入が増大した。新聞業界も大きく変わり、ニュースなどの情報はインターネットから容易に得ることができるようになった。さらに、本も紙から電子化されて電子出版としてネット上で販売されるようになった。このようななかで、現在では新しくWebサイトを運営管理する職業(Webマスター)を何百万人も誕生させ、このようなインターネット革命によって、さらに生産性(GDP)が向上した(図2右の中間黒の矢印)。
そして現在、第3のインダストリアル・インターネット革命時代を迎え、IoTを産業界に適用しその変革が行われ始めている(図2右の赤い矢印)。
具体的には、インターネット技術を産業界に活用(IIoT:Industrial IoT)して、製造業をはじめヘルスケア(医療)や輸送業、スマートシティなどが取り組まれ、新しいビジネス機会や雇用の創出が行われ始めている。
〔2〕インダストリアル・インターネット革命のGDPへの影響
米国GEの発表によれば、2012年には、世界のGDPは70兆ドルであったが、そのうち実に約46%(32.2兆ドル=70兆ドル×0.46)に、インダストリアル・インターネットが影響を与えるものと算出された。
また、シスコシステムズの分析では、IoTは、2020年までに民間の利益を21%増やし、グローバルな経済で見ると、金額にして19兆ドル(1,900兆円)増加させると発表している。
グローバルスタンダードを目指すIIC
このようなインダストリアル・インターネット革命を目指すIICは、より広いグローバルスタンダード(国際標準)を目指して、世界の各地域で活動している(図3)。例えば、米国のCPS〔Cyber Phycal Systems、NISTが推進注1〕、日本のIVI、フランスのAlliance Industrie du Futur(未来産業アライアンス)、中国のMade in China 2025(中国製造2025)、欧州のAIOTI(Alliance for IoT Innovation、IoTイノベーションアライアンス)などのIoTの各アライアンスとの連携を積極的に推進している。
図3 IICが推進する他の地域との連携
出所 各種資料をもとに編集部で作成
すでに米国の「IIC」は、ドイツの「プラットフォーム Industrie 4.0」とは2016年3月に正式に協力することに合意し、同5月に開催されたシカゴ会合では、テストベッドやテスト環境における協力や重要なセキュリティ分野の連携をはじめ、両者のリファレンス・アーキテクチャ・モデルである、
- IICのIIRA(Industrial Internet Reference Architecture)
- Plattform Industrie 4.0のRAMI 4.0(Reference Architecture Model for Industrie 4.0)
の統合に向けた具体的な審議を開始している。さらに、それらを実現するための今後のロードマップに関して審議も開始してい
る注2。