[「日本卸電力取引所」の役割と課題]

新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力取引所」の役割と課題≪第2回≫

─「新電力」のバランスをとったビジネス展開─
2014/08/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

2. 電力の卸市場とJEPXの市場領域

図2は、電力の卸市場という概念を整理したもので、具体的にJEPXのマーケット領域の例を示したものである。
 
図2に示すように、電力の実際のマーケット(市場)の種類として、
  1. デリバティブ市場:中長期(主に年単位・月単位)
  2. デイアヘッド市場:短期(前日)
  3. イントラデイ市場:超短期(数時間前)
  4. バランシング市場:リアルタイム(数分前)
などがあるが、現物市場としての卸電力取引所の主たる守備範囲は、このうちの(2)デイアヘッド市場と(3)イントラデイ市場である。
 
第1回の記事では、このうちの短期(前日。デイアヘッド市場)、超短期(数時間前。イントラデイ市場)について、JEPXにおける内容を解説した。電力ビジネスは、明日あるいは1週間後などの短期的ビジネスから、さらに何年後にどこにどのような規模の発電所を運開させるか、または送電線をいつ建設するかなど、中長期の需要を予測して、数年以上もかかる長期計画というのもあるが、JEPXの場合は、主に短期的ビジネスの領域をカバーしている注2
 
例えば、JEPXにおける当日市場の場合は、夜の17時から21時に受け渡す電力の売買入札を13時まで受け付けている。
 
図2右のバランシングという機能は、取引所ではなく、系統運用者の機能であり、ここでは至近時点の電力需要の変動に備えたり、急な発電所の脱落(運転中止)に対応するために給電指令を出すなどが行われている。この機能を市場化したものが「バランシングマーケット」である。
 
また、図2左に示す中長期の発電計画(投資計画)関しては、現在は、中長期の供給計画等の一環として発電所の建設計画などが、送電設備も視野に入れつつ立案されているが、今後は、一般電気事業者が自社の受持区域の安定供給を維持するために供給計画を構築するという枠組みではなく、「発電会社」や「小売事業者」が自社ビジネスのための供給力調達の計画を立てることになる。
 
自社のビジネスの範囲内の小売あるいは卸の需要にしたがって発電所の投資を行うような仕組みになると、長期的な設備投資の確保が現在以上に重要な課題になる。新規投資がなされないままに古い発電所を廃止するようになってくると、卸電力価格が値上がりしてしまう可能性がある。

◆図2 出所
 
▼注2
海外では、1~2年程度の先物の取引(デリバティブ)なども活用されている。
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