oneM2Mのアーキテクチャの構成
次に、oneM2Mの機能アーキテクチャ(機能面を重視して見たアーキテクチャ。実装とは異なる)を図2に示す。機能アーキテクチャは、図2の左側のサービスプロバイダAのシステムは、デバイス(端末)側(Field Domain)とサーバ/クラウド側(Infrastructure Domain)で構成されている。
図2 oneM2M機能のアーキテクチャ(機能面からの構成)
出所 山崎 徳和、TTC oneM2M専門委員会/ARIB oneM2M対応WG「oneM2Mリリース2の概要と関連動向の概観」、2016年9月9日
図2のサービスプロバイダAの機能アーキテクチャは、上から、
- AE層(アプリケーション機能層)
- CSE層(Common Service Entity、共通サービスプラットフォーム層:ミドルウェア層)
- NSE(ネットワークサービス機能層)
の3層の機能(E:Entity、エンティティ)構成となっている。また、図2の各所に参照点(Reference Point)が規定されているが、これは、各機能(エンティティ)間で物理的な接続インタフェースを設定し得る場所を示している。各エンティティ間には、図2に示すように、Mca、Mcc、Mcc’およびMcnという4つの参照点が定義されている。
また、図2に示すように、図2の左側のサービスプロバイダAのM2Mシステムと、それとは異なる図2の右側のサービスプロバイダBのM2Mシステムは、参照点Mcc’(中央の緑の文字)で接続されて、相互に通信可能となっており、システムの拡張が可能となっている。
oneM2M技術仕様リリース2の全体構成とその一覧
〔1〕技術仕様リリース2の全体構成
次に、2016年8月30日に公開されたばかりのoneM2M技術仕様リリース2の主要なフィーチャーの全体構成を、図3に示す。
図3 新規リリース(oneM2Mリリース2)の全体構成
出所 山崎 徳和、TTC oneM2M専門委員会/ARIB oneM2M対応WG 「oneM2Mリリース2の概要と関連動向の概観」、2016年9月9日
図3に示すように、リリース2は大きく、
- oneM2Mインターワーキング(相互接続機能)・フレームワーク
〔oneM2MとASAやOMA、OIC(OCF)、3GPPなどとのインターワーキング〕 - セマンティック・インターオペラビリティ
〔oneM2M標準デバイスと非標準デバイスと会話するための技術〕 - プロトコルバインディング(後述)の強化
- セキュリティ(Security)の強化
- 広範なサービス展開への強化〔oneM2Mスマートホームや産業(例:製造業)などへの展開〕
- 試験と相互接続性(Testing and interoperability)
という6つの新規フィーチャーから構成されている。これ以外にも、リリース1仕様の改訂版も含まれる。
〔2〕oneM2Mリリース2として承認された仕様
表6に、今回承認(Ratification)された17件のoneM2Mリリース2の技術仕様書(TS:Technical Specification)の一覧を、また、表7に、oneM2Mリリース2の9件の技術報告書(TR:Technical Report)の一覧を示す注3(表中の黄色の部分はセミナー当日に解説)。なお、表6には、リリース1の改訂版(R1改訂版)なども含まれている。
〔3〕oneM2Mの共通プラットフォームの各種機能
表6 oneM2Mリリース2として承認された技術仕様書(TS)一覧:2016年8月30日
http://www.onem2m.org/technical/published-documents
オントロジー(Ontology):概念の体系。システム内部のデータのセマンティックス(意味論:データが本来もつ意味を機械に理解させること)を含めたシステムのモデル(概念体系)を定義したもの。
出所 山崎 徳和、TTC oneM2M専門委員会/ARIB oneM2M対応WG「oneM2Mリリース2の概要と関連動向の概観」、2016年9月9日
表7 oneM2Mリリース2として承認された技術報告書(TR)一覧:2016年8月30日
※ oneM2M Release 2 specifications
出所 山崎 徳和、TTC oneM2M専門委員会/ARIB oneM2M対応WG「oneM2Mリリース2の概要と関連動向の概観」、2016年9月9日
さらに、図4にoneM2Mの共通プラットフォームの各種機能を示すが、リリース1で規定された12個のCSF(共通サービス機能モジュール。図4の橙色の12個の枠)に加えて、新たに図4の青色で示すセマンティックサポートのモジュール、インターワーキングのモジュールの2つが追加され、共通プラットフォームは、14個のCSFモジュールで構成されることとなった。
図4 共通サービスプラットフォームの各種機能
出所 山崎 徳和、TTC oneM2M専門委員会/ARIB oneM2M対応WG「oneM2Mリリース2の概要と関連動向の概観」、2016年9月9日
〔4〕oneM2Mのプロトコルバインディング
ここで、oneM2Mリリースのキーワードとして登場している、バインディングについて、簡単に解説しておこう。
バインディング(Binding)とは、結合する、関連付けるという意味であり、プロトコル・バインディングとは、プロトコルを関連付ける(結合させる)という意味である。例えば、「基本メッセージ」(プリミティブ)である、「要求(リクエスト)/応答(レスポンス)」などを、デバイス(機)とサーバ間でやり取りする場合、
- 既存のプロトコルであるHTTPを使用していればHTTPに対応付けてメッセージをやり取りする。
- これをMQTTに代えてやり取りする場合にMQTTプロトコルに対応付けて通信できるようにする。
- あるいはCoAPに対応付ける場合にはCoAPに対応付けて通信できるようにする。
というように、容易に対応付け(マッピング)して利用できるように方法が規定された。これを「プロトコルバインディング」と呼ぶ。これによって、今後新たにサポートされるプロトコルの追加を容易できるようにした。
リリース2では、〔改訂されなかったリリース1のCoAP(TS-0008仕様)〕と、リリース1を改訂したHTTP(TS-0009仕様)、MQTT(TS-0010仕様)に関する技術仕様書に続いて、4つ目となるWebSocket注4が追加され、表6に示すように、「TS-0020 WebSocket Protocol Binding」という技術仕様書がリリース2として策定され、発表された。
▼ 注3
技術仕様書(TS)と技術報告書(TR):一般に、技術仕様書(TS)は、Normative〔規範的(標準的)〕な技術仕様として制定される技術規格を規定する技術文書のことを指すが、技術報告書(TR)とは、あくまでもInformative(情報的)な技術を記述した報告文書として取り扱われる。
▼ 注4
WebSocket:Webブラウザとサーバ間でセッションを維持し、双方向リアルタイム通信を実現する通信プロトコル。