電池の分類:3つのタイプの電池
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)や電気自動車(EV)などの普及を背景に、次世代の電力貯蔵技術に関する関心が急速に高まっている。この電力貯蔵技術うち、電池について見ると、図1に示すように、
(1)<発電するだけの電池> 燃料電池、太陽光電池など
(2)<放電するだけの電池> 一次電池:マンガン電池、アルカリ電池など
(3)<電力貯蔵用の電池> 二次電池(充電と放電の両方が可能):鉛蓄電池、リチウムイオン電池など
のような3つのタイプに、大きく分けることができる。
このうち現在注目を集めているのは、化学的な反応を利用して、充電も放電もでき、しかも繰り返し使用が可能な二次電池である。周知の通り、図1に示す二次電池のうち、リチウムイオン電池は、他の二次電池に比べてエネルギー密度注1が高く、小型で軽量な蓄電池(バッテリー)を作ることができるため、現在は広く普及している。
図1 現状の電池の分類・種類と機能
出所 電力中央研究所 池谷 知彦、「電力貯蔵の技術開発動向」平成27(2015)年2月19日、http://www.global-kansai.or.jp/topics/img/H27.2.19-ikeya.pdf
しかし、最近報道されているように、サムスン電子のスマートフォン「Galaxy Note7」に搭載されたリチウムイオン電池が過熱して発火したり、パナソニックサイクルテックの電動アシスト自転車用のリチウムイオン電池を使用したバッテリーパックが過熱により焼損するなどの事故が相次ぎ、リチウムイオン電池を使用していくうえで、安全性への課題解決が重要となってきている注2。
新しい革新電池系の登場
このような課題を背景に、リチウムイオン電池の安全性対策とともに、リチウムイオン電池を含む既存の電池系を超えたエネルギー密度をもつ、新たな電池(これは「革新電池系」と呼ばれる)の登場が望まれ、活発な研究開発が行われている。
革新電池系という用語については明確な定義がないことから、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、2030年頃に要求される、現行の電池系では到達できないような高い性能を達成できる可能性の電池系を「革新電池系」と命名した。
革新電池系としては、例えば表1、図2に示すように、作動電圧が低く(1〜3V程度)、容量密度(400〜1000Ah/kg程度注3)が大きい金属-空気電池、リチウム硫黄電池、金属負極電池などが挙げられている。
表1 革新電池系の例とその比較
出所 東京電力HD 道畑 日出夫、「新型電池の開発LLZ電解質を用いたリチウム硫黄電池」、2016年10月12日
図2 革新電池系(金属-空気電池、リチウム硫黄電池、金属負極電池)の位置付け
出所 NEDO、「二次電池技術開発ロードマップ 2013」の16ページの図 http://www.nedo.go.jp/content/100535728.pdf、http://www.nedo.go.jp/library/battery_rm.html
図2は、蓄電容量が従来のリチウムイオン電池よりも大きい、
(1)2000Wh/kg(2kWh/kg)のラインよりも超えて可能性のある金属-空気電池
(2)1000Wh/kg(1kWh/kg)のラインよりも超えて可能性のあるリチウム硫黄電池
(3)500Wh/kg(0.5kWh/kg)のラインよりも超えて可能性のある金属負極電池
など、大まかに「革新電池系」の分布を示したものである。
▼ 注1
エネルギー密度:エネルギー密度には、「重量エネルギー密度」と「体積エネルギー密度」がある。電池の重さ1kgあたり、どれ位のエネルギーを蓄えられるかを示すものが「重量エネルギー密度」で、単位はWh/kgで表される。一方、電池の体積1L(1Little:1リットル)あたり、どれ位のエネルギーを蓄えられるのかを示すものが「体積エネルギー密度」で、Wh/Lという単位で表される。
▼ 注2
・サムスンの「Galaxy Note7」に関する声明:2016年11月、http://www.samsung.com/uk/note7exchange/customernotice/openletter.html?CID=AFL-hq-mul-0813-11000279
・パナソニックサイクルテックのプレスリリース:2016年9月26日、http://news.panasonic.com/jp/press/data/2016/09/jn160926-4/jn160926-4-1.pdf
▼ 注3
容量密度(Ah/kg):アンペアアワー(Ampere Hour)/kg。1kgの重さの電池に1時間あたり流した電流量のこと。