[スペシャルインタビュー]

スマートシティはビジネスでなければならない

亜細亜大学 都市創造学部 都市創造学科 教授 岡村 久和氏に聞く!
2017/04/10
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

スマートシティ・ビジネスの国際的な動向

〔1〕スマートシティの市場:50%近くがアジア地域

─編集部:具体的に、スマートシティに関するビジネスの国際的な動向や市場を、どのように見ていらっしゃいますか。

岡村:図1に示すように、世界におけるスマートシティの市場は、50%近くがアジアとなっています。その金額の規模は、ここでは2030年に約3,900兆円と予測されていますが、実際、このアジア地域でビジネスを展開しているのは、ほとんどが欧米と中国の企業です。図1の棒グラフの最下位に示す日本の売上げは、十分なビジネスになっていないのが現状です。

図1 世界におけるスマートシティの市場評価

図1 世界におけるスマートシティの市場評価

出典:日経BPクリーンテック研究所、「エグゼクティブサマリー」、『世界スマートシティ総覧2012』、2011年10月、日経BP社
出所 岡村久和「スマートシティ最新情報」(2017年2月、インド・ムンバイでの講演資料より)

 また、現在、世界各国でスマートシティのとらえ方が多様化しているため、私が整理して評価したものを表1(6ページ)に示します。例えば、米国国内でスマートシティについて質問しますと、多くの人がITで支えられたハイテク都市だと言います。また、米国ではIBMが提唱するスマーターシティ注3という用語も普及していますが、これはもう少し小さい都市のイメージととらえられています。しかし、スマーターシティを提案したIBMは、もう少し大きい都市をイメージしています。

表1 各国・地域のスマートシティのイメージ

表1 各国・地域のスマートシティのイメージ

出所 岡村久和「スマートシティ最新情報」(2017年2月、インド・ムンバイでの講演資料より)

〔2〕中国の2つの戦略

岡村:一方、メインチャイナ(中国本土のこと。以降、中国と呼ぶ)では次のような2つのとらえ方があります。

  1. 中国国内のスマートシティ
  2. アジア戦略としてのスマートシティ

 中国の場合は、中国国内に数百のスマートシティ注4を指定し、その各スマートシティに高層ビルなどを建て、それらの各スマートシティを新幹線で結ぶという構想です。

 これによって、不動産としてのビルの価値を向上させ、ビルのフロア料金を上げることができますので、まさに不動産投資としてのビジネスです注5

〔3〕中国通貨「元(げん)」が国際決済通貨へ

岡村:また、スマートシティ・ビジネスと直接的な関係にある、中国の通貨である「元(げん)」が、ドルやユーロ、円、ポンドに次ぐ5番目の国際決済通貨〔IMF(国際通貨基金)、2016年10月1日付け〕になったことから、国際ビジネスの流れが大きく変わってきました。

 例えば、中国がフィリピンにある中国の建設会社にお金を支払う場合、中国の「元」は、以前はアジア開発銀行(ADB)でドルに換えて支払われていました。しかし、2016年1月に中国が主導して開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)経由の場合は、ドルに変換せずに、直接「元」で支払われるようになりました。


▼ 注3
IBMが発表したSmarter Cities(スマートな都市づくり)向けに、2011〜2013年の3年間に世界中の100都市に総額5,000万ドル相当するコンサルティング・サービスを無償で提供する社会貢献プログラム‘IBM Smarter Cities Challenge’のこと。http://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/48327.wss

▼ 注4
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_4/china_03.html
https://www.nri.com/jp/opinion/chitekishisan/2012/pdf/cs20120902.pdf

▼ 注5
AIIB:Asian Infrastructure Investment Bank、アジアインフラ投資銀行。中国(中華人民共和国)が提唱し主導して2015年12月25日に発足した。創設メンバーは57カ国で、日本や米国は不参加。2016年1月に北京市で開業している。なお、AIIBとは別に、67カ国・地域が参加するアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)があるが、日本は同銀行への最大の出資国である。

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