日本のスマートシティ・ビジネスと海外での展開
〔1〕World CSR Dayでの講演内容と日本モデル
─編集部:インドのムンバイで行われた「World CSR Day」コンファレンスではどのようなことが印象的でしたか。
岡村:スマートシティという用語の響きは大変かっこいいものですから、企業のなかでは、エリートが担当し取り組んでいる傾向があります。ですから今回のプレゼンテーションでも、世界的な調査会社やコンサルタント会社、シンクタンクなどがシンガポールや中東などにおいて、スマートシティがガンガンつくられているようなことを、講演(プレゼン)で強調するケースが目立ちました。
具体的には、スマートシティには、①省エネモデルがある、②投資モデルがある、③ブローキングモデル(取引仲介モデル)などの講演もありました。また、「スマートシティで街が発展すると人は動かなくなるので運動しなさい」「お祭りで街を盛り上げましょう」あるいは、「スマートシティを実現するためのソフトウェアを買ってください」というような、多彩なレベルの話が、多かったという印象でした。
先にお話したように、スマートシティは、もっとドロドロしたもので、現場の実情を理解しそれらの課題に歩み寄りながら解決するなど、現場とマッチさせていくビジネスが求められているのです。
今回のコンファレンスにおける講演を聞いていると、日本は決してスマートシティで世界をリードしているわけではありません。しかし、日本では、すでに2010〜2014年度にかけてスマートシティ(スマートコミュニティ)について、図6や表3に示すような4つの地域での実証実験が行われ、これらの経験をもとに、海外(現地)においても、地道なスマートシティの構築を推進しています。
図6 日本のスマートコミュニティ(スマートシティ)のイメージ
出所 経済産業省
表3 スマートコミュニティ実証事業の概要
〔2〕スマートシティ・ビジネスにおける海外の日本モデル
岡村:日本企業の海外におけるスマートシティ・ビジネスを見ると、例えば、
- インドネシアの首都ジャカルタで地下鉄をつくっている清水建設注8
- 前述したイスカンダル・プロジェクトに参加している三井物産注9
- ベトナムで新都市開発を推進している東急電鉄(写真3 注10)
などの企業が、地道に現地の要望を聞き、歩み寄って街づくりをしています。このような姿を見ると、中国や欧州モデルと比べて、日本モデルの真面目さを感じました。
写真3 東急電鉄がベトナム·ビンズン省で進めている新都市開発の外観
〔3〕IT/IoT系を取り込んだスマートシティ・ビジネスを
岡村:発展途上国や新興国におけるスマートシティ・ビジネスでは、スマートグリッドや再生可能エネルギー関連のシステム、都市開発などの土木事業に続いて、今後は、よりIT/IoT系のハイテクに関連するビジネスが増大していくものと見られます。
スマートシティのビジネスについて、日本企業が、現地が抱えているさまざまな課題や痛みに歩み寄りながら、さらにIT/IoT系のハイテクを取り込んで、国際競争に打ち勝って展開していくことを期待しています。
▼ 注8
清水建設ニュースリリース「インドネシア初の地下鉄シールドトンネルが貫通」、2017年2月24日
▼ 注9
三井物産ニュースリリース「マレーシアでのスマートシティ開発にマスターディベロッパーとして参入」、2013年5月31日
▼ 注10
ベトナム・ビンズン省新都市開発