市場のトレンドはハードからソフトへ移行
現在のモノをつくる機械(マザーマシン)の市場は海外にあるため、機械を買ってもらうということでよいが、その一方で現在のビジネスのトレンドは、ハードウェアからソフトウェアに移行しつつある。
このような状況下で日本の現状を見てみると、
- マーケットは中国や途上国
- ソフトウェアに弱くその技術は海外依存
- ネットワーク化や標準化はフォローキャッチアップ型で受け身の状態
- ラインビルダー(工場の生産ライン構築者)というビジネスを行う業者の存在が希薄
などの問題を抱えている。
例えば、日本から多くの工作機械を輸入している台湾の非営利団体であるPMC注3では、「SkyMars」というクラウドコンピューティングのツールによって、これまで困難とされてきた異機種の工作機械(例:ファナックや三菱電機)について、相互接続が可能かどうかを判断するサービスを無料で提供している。
具体的には、リモートマシンのリアルタイム状況監視やNCプログラム注4のダウンロード、アラームの通知と異常履歴表示などのサービスが無料で提供されているのである。国として、日本に追い付き追い越せの方針が強化されている。
このようなサービスを台湾の多くのユーザーが利用している現状を見ると、今後、台湾が競争相手として高機能な工作機械を開発できるまでに進化したとき、日本の工作機械の輸出に、大きな影響を与えてくることは想像に難くない。
つながなければ生き残れない
図2は、これまでに述べた現状を見ながら、日本の製造業の25年後についての展望を予測したものである。
図2 製造業の25年後を大胆予測〔製造業の分化(どの製造業が危ないのか)〕
出所 西岡靖之「デジタル化による大競争時代で日本の企業は生き残れるか?」、IVI公開シンポジウム2017ーAutumn−、2017年10月12日
図2の一番上に示す、情報機器、家電、住宅などを提供する最終消費財産業(生活者が消費する製品やサービスを提供する企業)のITを駆使する分野には、すでに大波が到来しており、2017年9月時点の世界時価総額ランキングにおいて、第1位から第5位までの上位を、アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンと、米国のIT企業勢が占め、日本の最高位は第42位のトヨタ自動車である。
また、図2の真ん中に示す、医薬品、素材、部品加工、デバイスなどを提供する素材・部品産業(最終消費財を構成する要素や機能を提供する企業)は、今後も安定的な成長を見込めるが、図2の一番下に示す、産業機械や制御機器などを提供する製造システム産業(製造やサービスのしくみ、要素を提供する企業)は、まさに「つながなければ生き残れない」産業であり、これに成功するか否かが、産業の盛衰を決めることになる。この産業分野は、プラットフォーム化、デジタル化、オープン&クローズ化などが大きな焦点となっている。
▼ 注3
Precision Machinery Research Development、精密機械研究開発センター
▼ 注4
NCプログラム:NCは、Numerical Control(数値制御)の略。NCプログラムとは、工作機械を動かすための数値制御プログラムのこと。