[特別レポート]

急速に普及する産業向け国際標準「OPC UA」

― Industrie 4.0規格に採用され、次世代の高速通信規格「TSN」(IEEE 802.1)にも対応 ―
2018/01/01
(月)
三橋 昭和 インプレスSmartGridニューズレター編集部

2018年も第4次産業革命は引き続き注目のテーマである。ドイツのIndustrie 4.0をはじめ米国のIIC、日本のIVI、中国製造2025など、次世代工場に向けた国家プロジェクトが活況を呈している。そのなかで、Industrie 4.0の参照モデルであるRAMIモデルに、OPC UA(UPC統一アーキテクチャ)仕様が採用された(2015年4月)こともあり、OPC UAが第4次産業革命を実現するキーテクノロジーとして急速に脚光を浴びている。すでにOPC関連の市場には、全世界4,200社を超えるサプライヤーから、35,000種類以上の異なるOPC製品が提供され、1,700万件を超えるアプリケーションで使用されるなど、まさにマンモス市場を形成している。ここでは、SCF2017(注1)で行われた、株式会社たけびし 技術本部 オリジナル商品開発課 主事岸本 嘉人(きしもと よしと)氏のセミナーをもとに、次世代バージョンへ向けてなお進化・発展を続けるOPC UAの最新動向を解説する。

国際標準「OPC UA」とは

 OPC UA(OPC Unified Architecture、UPC統一アーキテクチャ)とは、IIoT(産業用IoT)時代に対応したマルチベンダシステムの相互運用性と、情報データ転送のための国際標準のソフトウェア通信仕様(規格)である(図1)。この仕様は、OPCファウンデーション(OPC協議会、表1)によって策定され、国際標準「IEC 62541」となっている。

表1 OPCファウンデーションのプロフィール(敬称略)

表1 OPCファウンデーションのプロフィール(敬称略)

※1 OPC:もともとはOLE for Process Controlの略であったが、現在は「OPC」という名称が使用されている。OLE(Object Linking and Embedding)とは、Windowsの機能の1つで、アプリケーションで作成したデータを、別のアプリケーションのデータに埋め込んだり、連動させたりすることができる機能のこと。元データが変更されると、埋め込み先のデータも自動的に変更される。
※2 IEC TC65:International Electrotechnical Commission Technical Committee65、国際電気標準会議第65技術委員会。「Industrial-process measurement, control and automation、工業用プロセス計測制御の標準化」を担当する技術委員会。
出所 各種資料をもとに編集部作成

 OPC UA仕様は、工場やプラントなどの産業オートメーション分野向けに幅広く普及している。冒頭で述べた通り、すでに3万5,000種類以上のOPC製品が、世界の4,200社を超えるサプライヤーから提供されており、そのもとで、1,700万件を超える膨大な数のアプリケーションが動作している。

 OPC UAは、既存のOPC Classic注2をベースに2008年に発表された仕様である。当初は、工場などのデスクトップパソコンやサーバ間の通信に適したWidows OS向けのインタフェースであった。その後、生産システム分野において、組込みデバイスやPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)などでもOPCによる通信を実現したいというニーズが出てきたため、(特定のプラットフォームに依存しない)マルチプラットフォームに対応したOPC UAという仕様が策定された。その結果、図2に示すように、現在ではデスクトップPCからスマートフォン、PLC、タブレット、企業サーバに至るまで、OPC UAを組み込んだ製品が多く登場しているのだ。

図2 マルチプラットフォームに対応したOPC UA仕様のイメージ

図2 マルチプラットフォームに対応したOPC UA仕様のイメージ

出所 たけびしセミナー「OPCについて」、SCF2017(2017年12月1日)

〔1〕OPC UAはクライアント-サーバ方式

 図3に示すように、OPC UAの通信は、クライアント-サーバ方式で行われる。

図3 クライアント-サーバ方式の「OPC UA」システムのイメージ例

図3 クライアント-サーバ方式の「OPC UA」システムのイメージ例

出所 たけびしセミナー「OPCについて」、SCF2017(2017年12月1日)

 オフィス系の情報システム(IT:Information Technology)と生産系の制御システム(OT:Operational Technology)とを分離できることは、セキュリティの面からは都合がよい。

 その反面、生産系の制御システムでは、すでにPLCやDCS注3などさまざまなメーカーの多様な装置が導入され稼働している。

 そのため、従来は、情報システム側から、生産系の制御システム側に接続された個々のPLCの稼働状況や、やり取りしているデータを見る場合、個々に各社のPLCなどの仕様に合わせて個別のシステムを構築していた。しかし、工場にベンダ各社からの多様なセンサーやコントローラが導入され増加してくると、従来のように情報システム側で個別に対応していては、コストも嵩んでくる。

 そこで、生産系の制御システム側にOPCという国際標準の通信仕様を策定すれば、情報システム側から制御システム側の情報を容易に連携(アクセス)できるようになる。

 例えば、図3に示すように、標準化されたOPC UAを導入したシステムでは、

  1. OPCクライアントソフトを搭載した「情報システム(X)、(Y)」と、
  2. OPCサーバソフトを搭載した制御システム機器(各PLCやDCS)

が互いに通信できるようになる。

 このようなOPC環境になれば、制御システム系のOPCサーバの配下には、特定のメーカーの機器だけではなく、各社のさまざまなPLCやDCS(分散制御システム)が接続可能となり、マルチベンダによるオープンなシステム環境が実現できる。

〔2〕Industrie 4.0で採用

 現在、ドイツを中心にIndustrie 4.0が推進されている。Industrie 4.0を実現するにあたって何が課題となっているかについて、各社からアンケートを取ったところ、「標準化すること」が最も重要な課題として挙げられた。

 すでに標準化が進められ普及していたOPC UAが、Industrie 4.0が求める必要な要素を満たした通信プロトコルとなっていたことから、2015年にIndustrie 4.0の「RAMI4.0モデル」注4の必須技術として採用されることとなった注5。また、OPC UAは、米国のIIC、日本のIVI、中国の中国製造2025など世界のIIoTの標準プロトコルとして推奨されている。OPCファウンデーションの活動拠点は、欧州や米国に加え、アジアでは日本、中国、韓国に設立されており、さらにインドにも設立が予定されている。


▼ 注1
SCF2017:System Control Fair 2017(システムコントロールフェア2017)。2017年11月29日〜12月1日、東京ビッグサイトで開催。

▼ 注2
OPC Classic:OLE for Process Control Classic、オーピーシー クラシック。産業オートメーション分野やその他の業界における、データ交換を目的とした相互運用を行うための標準規格。OPC Classicは、ソフトウェア・コンポーネント間のデータ交換のため、Microsoft Windowsの技術であるCOM/DCOM(分散型コンポーネント・オブジェクト・モデル)に基づく。その仕様は、プロセスデータ、アラーム、履歴データにアクセスするために、それぞれOPC DA、OPC AE、OPC HDAと別々に定義されているが、通常OPCというと、OPC DAのことを指す場合が多い。

▼ 注3
DCS:Distributed Control System、ディーシーエス。「分散制御システム」と呼ばれ、制御システムを構成する機器ごとに設置される。設置された複数のDCSは、ネットワーク接続されたなかで互いに補完し合いながら、プラントなどの大規模環境において、流体の温度や圧力などを統合制御する。

▼ 注4
RAMI4.0モデル:Reference Architecture Model Industrie 4.0 Model、Industrie 4.0の参照 アーキテクチャモデル。RAMI4.0の通信層(通信機能)にはIEC 62541:OPC-UAが推奨プロトコルと決められている。

▼ 注5
Plattform Industrie 4.0調査報告「Industrie 4.0 実現戦略」(原版:2015年4月発行)、ジェトロ翻訳版:2015年8月発行

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