ポストFIT時代を見据えた新たなチャレンジ:VPPへの取り組み
〔1〕推進されているVPP構築実証事業
現在、IoTの活用によって太陽光発電や風力発電などの分散電源を統合制御して、あたかも1つの発電所のように機能させ、電力の需給調整ができるようにするVPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)について、経済産業省は、2020年に50MW以上のVPPの実現を目指して、2016〜2020年度の5カ年計画で実証事業を推進している。
第1年度(2016年度)は、29.5億円の予算を計上して実証事業を行い、「平成28(2016)年度VPP構築実証事業の成果報告書」および、「バーチャルパワープラント構築事業の7つプロジェクトの成果報告書」はすでに公表されている注6。第2年度の平成29(2017)年度は補助金40億円の予算を計上して実施されている。
NTTスマイルエナジーは、代表事業者を関西電力とする、平成28(2016)年度 VPP構築実証事業「関西VPPプロジェクト」に参画している(図8)。
図8 NTTスマイルエナジーのVPP実証事業への取り組み
出所 NTTスマイルエナジー事業戦略発表会資料より、2017年11月14日
同VPPプロジェクトでは、
- 2017年4月に創設される(当時)ネガワット取引市場などのビジネスチャンスの活用を念頭に、需要家設備をアグリゲート(集約)するシステムや事業スキームを構築する
- 蓄電池やエコキュート(EQ)などの需要家側リソースについては、VPP構築実証の5カ年(2016〜2020年度)を活用し、最低限必要と考えている規模のアグリゲートを目指す
ことを目的とし、VPP事業化に向けて、サーバ、ゲートウェイ、各種リソース(蓄電池、EV、EQ、発電機、HEMSなど)からなるシステムを構築し、接続試験などが行われた。
〔2〕NTTスマイルエナジーのVPPへの取り組み
NTTスマイルエナジーはこのプロジェクトの中で、家庭用蓄電池サーバ(エコめがね)と蓄電池を接続し、個々の蓄電池を通信で束ねて制御(高速群制御)するという、IoTを活用した電力の需給調整に関わる検証を行った。同社における具体的な実証内容とその成果を図9に示す。
図9 平成28(2016)年度VPP構築補助事業の成果
出所 NTTスマイルエナジー事業戦略発表会資料をもとに編集部作成
第2年度(2017年度)は、親アグリゲータ(関西電力)や送配電事業者との連携や蓄電池のリレー制御などの実証を行う。これは、一定の出力を長時間確保するために、1つ1つの蓄電池を1時間ずつ(リレーして)放電させていくという実験である。さらに、実証エリアも東京電力や九州電力管内に拡大して展開している(前出の図8を参照)。
2019年から10年間の余剰電力買取期間が終了する、いわゆる「卒FITユーザー」を見据え、NTTスマイルエナジーは、VPP事業において、それらユーザーをアグリゲートして「調整力」を提供するとともに、再エネ出力制御回避サービスの実現を目指していくとしている(図10)。
図10 NTTスマイルエナジーがめざすVPP実証事業の今後
出所 NTTスマイルエナジー事業戦略発表会資料をもとに一部加筆・修正
「図10のように、2019年以降は容量市場、つまり待機する調整力注7に対して固定的な料金をいただける可能性がでています。それが可能になると、ユーザーに料金を還元していくサービスができるのではないかと考えています。この容量市場とは、蓄電池の所有者に対してその一部を電力供給がひっ迫した際に使っていいという契約をして(VPP事業者が)使用権をもらいます。一方で電力会社は、その分のバックアップ電源を用意しなくても済むので、その分のコストをユーザーに還元できるようになるというものです。英国などではすでに実施されていますが、日本でもその検討がなされています。
このような市場ができると、ユーザーにとっても購入した蓄電池費用の回収の一部に当ててもらうことができるようになり、このことが、卒FITユーザーが出てくる2019年に、蓄電池導入・普及の一助になってくれると期待しています」(小鶴氏)。
▼ 注6
https://www.iae.or.jp/2017/04/11/vpp-report-fy28/
▼ 注7
待機する調整力:市場が必要なタイミングで電力の需要や供給に対応できる、電力会社の発電所以外の各種電源などのリソースのこと。