グローバルな再エネビジネス市場へのチャレンジ
〔1〕IoTやAIを活用した取り組み
NTTスマイルエナジーでは、いまや世界の潮流でもあるIoTやAIを活用した新たな開発も行っている。
AIを活用してPV発電量や消費電力量、電力市場取引データなどの学習を重ね、最も“お得”な充放電方法などについて、自律的に判断して制御できるAIを現在開発中である。これによって充電元や太陽光/電力会社/自家消費などの供給先の選定ができ、充放電のタイミングや充放電量の最適化に活用できる。「2018〜2019年頃には実用化したい」と小鶴氏は語る。
また、ブロックチェーンを活用したP2P電力流通サービスのプラットフォームの構築に向けた開発も進められている。
FITの終了に伴い、PVが発電した電力の自己消費に向けて蓄電池の導入が増えることが想定され、エネルギーの分散化という点においても、ブロックチェーンが提供する証跡管理などのセキュリティ機能は注目されている。
「現在、託送料金の見直しが検討中で、低圧間同士のやり取り(電力融通)を行ってもいいのではないかという論点も出てきています。仮にそれが可能となれば、価格的なメリットを出せるようになります。セキュアでコストの安い電力の売買ができる可能性があります」と小鶴氏。
〔2〕分散化、融合の新エネルギー時代への取り組み
日本は、欧米に遅れて、ポストFIT時代をこれから迎えていく。
電力システム改革のなかで自由化が進み、エネルギーの分散化、IoT/AI技術などデジタル技術の普及による業界を越えた融合は、これまでのエネルギーのバリューチェーンを大きく変えていくことになる。さらに、COP21(パリ協定)注10の発効(2016年11月4日)に伴い、自動車企業はEVへ全面シフトとなり、自動車も「走る蓄電池」としてスマートハウスと連携することになる。
このような背景のもと、NTTスマイルエナジーにおいても、エコめがねのプラットフォームを使って、今後は、図11に示すように、
- 長期安定稼働(基幹電源化)
- 再エネの最大限導入
- 系統安定化
- 環境価値流通
- P2P電力流通
についてエネルギーIoTサービスを実現していく。
図11 エネルギーIoTを活用したパリ協定への貢献
出所 NTTスマイルエナジー事業戦略発表会資料より、2017年11月14日
再エネのビジネスはグローバル市場になっているが、海外展開に関して小鶴氏は、
「PPAモデルは、オフグリッド、つまり送電系統と繋がっていない電力システムを運用できる可能性をもっています。電気が提供されていない、例えば新興国などのエリアでも、システムやビジネスモデルなどをパッケージ化して提供することも考えられます。あとは電気の価格がどのくらいで折り合うかということだと思います」と数年後への新たなビジネスの可能性に見解を示した。
再エネを拡大するためのFIT政策によって太陽光の市場は飛躍的に拡大したが、その一方で再エネの大量導入による系統網の電圧や周波数が不安定化するという問題に、日本のエネルギー業界は直面している。電源の分散化に伴う「自産自消」時代に、同一地域内(マイクログリッド)での余剰電力の需給調整においては蓄電池が必須となり、これらの検証については今後も課題である。
2019年から始まるポストFIT時代を見据えて、通信と制御技術を核に事業展開をしてきたNTTスマイルエナジーが、新たなビジネスを創出し、世界の再エネ市場でビジネスに挑戦することに期待したい。
▼ 注10
「パリ協定」:2015年12月12日(現地時間)、フランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降、すべての国が協調して地球温暖化問題に取り組むための仕組みを示した新国際条約「パリ協定」(the Paris Agreement)のこと。COP21の参加国196カ国が全会一致で採択した歴史的な条約。