[特集]

エネルギーIoTで変革をめざすNTTスマイルエナジーの再エネアグリゲータとしての挑戦

― ポストFIT時代の再エネビジネスのゆくえ ―
2018/01/01
(月)
威能 契 インプレスSmartGridニューズレター編集部

ポストFIT時代を見据えた新たな再エネビジネス

 エコめがねを中心とした、太陽光発電による再エネビジネスを展開しているNTTスマイルエナジーであるが、2019年からは、卒FITユーザーが登場し、ポストFIT時代を迎えることになる。

 同社は今後、どのような事業展開を進めようとしているのだろうか。ここでは、VPP事業以外の取り組みについて見ていく。

〔1〕再エネの価値向上への取り組み:スマイルリング

 NTTスマイルエナジーは、学校の屋上で発電された電気を卒業生などゆかりのある消費者へ提供し、母校を応援する「学校応援でんき」という新サービスを、柴田工業(愛知県名古屋市)、みんな電力(東京都世田谷区)、高槻市(大阪府)と共同で、2018年1月から提供を開始する注8

 柴田工業が学校屋上への太陽光設備施工と維持管理、みんな電力が電力小売サービスの提供、高槻市が公共施設屋根貸し事業、NTTスマイルエナジーが、同ビジネスモデルの企画コーディネートを行い、発電モニタリングなどのプラットフォームを提供する。

 「学校応援でんき」の最大の特徴は、消費者が同サービスの電力を購入することで、母校などへ応援金が還元される点である。学校施設や自治体などは、応援金に加えて、太陽光設備設置による使用料を見込めるため、施設の改修などが可能になるという。

 「学校応援でんき」は、消費者が自らの選択で特定の発電所と結びつき、価値が目に見える形で還元されるという新たな電力のあり方を通して、再エネ流通による価値の創出を実現するというものである。2017年11月から高槻市から3校で採用されている(2018年初頭には提供開始予定)。

〔2〕再エネの最大限導入に向けた取り組み:学校PVと公共PVの推進

 さらに、日本の再エネ普及と地域の防災力の強化を目的とした新たな取り組みも推進している。屋根を発電事業者に貸与して自治体がコスト負担せずに発電事業を実施するスキームは、今、全国の自治体からも大きな注目を集めている。

(1)「学校PV」の推進

 学校の屋根上に太陽光パネル(PV)を設置することで、自治体は屋上利用料や償却資産税が得られるだけでなく、災害時の避難所の自立電源としても活用できる。予算を確保できずに設備設置ができない自治体も多く、また小規模かつ分散PVへの投資には、金融機関は消極的であるという実情もある。

 そのようななかで、NTTスマイルエナジーが事業主となってPV設置を推進していくというもの(施工業者は柴田工業)である。すでに、名古屋市(300校程度)や大阪市(300校程度)において実施されている。

(2)公共PV(カーポートPPA等)の推進

 公民館や公園の駐車場などの公共施設に、PVシステム一体型のカーポート(屋根と柱、梁などがあるだけでの簡易的なもの)をPPAモデルで設置していく(事業者はファブスコ)というもの。これにより、災害時は避難所の自立電源として活用でき、併せて自治体としては、資産税や土地賃借料などの収入拡大も見込める。

 初期投資が不要で災害に強い街づくりに貢献できる。

〔3〕環境価値(J-クレジット)注9のアグリゲート事業

 NTTスマイルエナジーは、家庭向けPVユーザーへの付加価値として、環境価値(Jクレジット)のアグリゲートサービスも展開する〔平成29(2017)年11月1日にプロジェクト登録が完了〕。PVで発電した電気の自家消費分と売電分(環境価値)について、NTTスマイルエナジーが集約・流通・還元(アグリゲート)し、CO2削減に向けた環境活動に活用する。同社は、2018年度中の提供開始に向けて検討中である。


▼ 注8
http://nttse.com/info/20171101.html

▼ 注9
J-クレジット制度:省エネ機器の導入や森林経営などの取り組みによって、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を売買可能な「クレジット」として国が認証する制度。
クレジットの認証・発行までには、プロジェクトの登録とモニタリング(削減量や吸収量を算定するための計測など)の2つのステップがある。
購入されたクレジットは、低炭素社会実行計画・ASSET事業の目標達成、地球温暖化対策推進法(温対法)・省エネ法の報告、製品・イベントのカーボン・オフセットに活用できる。
https://japancredit.go.jp/

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