[特集]

次世代ビジネスのパラダイムを変える脱炭素化への新しい動き

― SDGs/パリ協定と3つの新国際組織「RE100・EP100・EV100」 ―
2018/02/07
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

国連気候変動枠組条約とパリ協定

〔1〕パリ協定の発効と始動時期

 歴史的な経緯を見ると、1992年に、大気中の温室効果ガス(CO2)の濃度を安定化させることを究極の目標とする「国連気候変動枠組条約」が採択され、国際的に地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいくことが合意された。同条約に基づいて、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催されている。

 例えば、「京都議定書」が採択された京都(日本)での第3回COP3(1997年12月1日〜10日)や、画期的な「パリ協定」注3が196カ国・地域全会一致で採択されたパリ(フランス)での第21回COP21(2015年11月30日〜12月13日)がある。

 すでに、パリ協定は2016年11月4日に発効され、2020年から始動することになっており、現在、その運用ルール(パリ協定の実施指針、ルールブック)がCOP22(モロッコ、2016年)およびCOP23(ドイツ・ボン、2017年)で検討され、2018年のCOP24(ポーランド・カトヴィッツェ)で採択される予定となっている。

〔2〕パリ協定と世界各国の対応

 「パリ協定」が全会一致で採択されたことに伴い、全世界の企業は、地球温暖化対策に向けた各国の温室効果ガスの削減目標を実現するため、政府においても企業においても、「パリ協定」の実現を基本とするビジネスを基本としてすることが最重要課題の1つとなってきた(表2)。

表2 パリ協定の概要と日本の対応

表2 パリ協定の概要と日本の対応

※1 産業革命以前:パリ協定では「pre-industrial levels」(工業化前のレベル。すなわち産業革命前のレベルのこと)という表現であり、パリ協定で記述されている「pre-industrial levels」の時期は必ずしも明確に規定されているわけではない。ただし、国連組織であるIPCC発行の「Climate Change 2014 Synthesis Report」のAnnex II: Glossary (「気候変動2014年統合報告書」の付属書II:用語集)では、Pre-industrial(See Industrial Revolution):「the periods before and after 1750、1750年前後の期間」とされている。英国で1750~1850年に起こった産業革命を指して1750年以前とする説もある。
IPCCはIntergovernmental Panel on Climate Change(国連気候変動に関する政府間パネル)の略。
https://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar5/syr/SYR_AR5_FINAL_full_wcover.pdf
出所 各種資料をもとに編集部で作成

 このため、例えば自動車産業に見るように、パリ協定の発効に伴って、欧州のドイツ政府やフランス政府は、室温効果ガス対策として、2040年までにガソリンやジーゼル車の販売禁止の方針を打ち出し、さらに米国のカリフォルニア州や各自治体、中国やインドにおいても、CO2排出規制が強化されている。

〔3〕パリ協定と日本政府の対応

 このような動きに対して日本では「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、国連気候変動枠組条約事務局に、「日本の約束草案」を2015年7月に提出した。これに基づいて、

①中期的目標として2030年度までに2013年度比で26%の温室効果ガスを削減するとともに、

②長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す方針を、

2016年5月に、国連気候変動枠組条約事務局に提出した(表2)。


▼ 注3
パリ協定:世界の平均気温上昇を2度未満より十分低く抑えるという目標。2015年12月に採択。すでに2016年11月に発効され、2020年から始動する。
パリ協定全文(Paris Agreement)

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