台頭する3つの国際イニシアティブ:RE100・EP100・EV100
パリ協定採択と前後して、気候変動に対する国際的な高まりを背景に、3つの国際イニシアティブ「RE100、EP100、EV100」が設立され活動を始めた(2018年1月現在)。
〔1〕RE100:Renewable Energy100(2014年9月設立)
再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%の導入を推進するイニシアティブ。企業などの事業運営において100%再エネで調達することを目標として設立された。加盟数は119社。
〔2〕EP100:Energy Productivity100(2016年4月設立)
エネルギー効率向上(省エネ)を推進するイニシアティブ。企業などの事業運営においてエネルギー効率を倍増(100%向上)させることを目標として設立された。加盟数は13社。
〔3〕EV100:Electric Vehicles100(2017年9月設立)
電気自動車(EV)の導入を100%目指して推進イニシアティブ。急成長する輸送部門における電気自動車(EV)への移行を加速させることを目標として設立された。加盟数は16社。
日本におけるRE100、EP100などの取り組み
このような国際的なSDGsやパリ協定、RE100・EP100・EV100への取り組みを背景に、低炭素社会の実現を目指して、日本でも次のような先進的な企業が現れ、注目されている。
〔1〕積水ハウスが住宅業界初のRE100へ加盟
現在、政府の後押しもあって、ハウスベンダは、スマートハウスの提供を活発化させ、HEMS機器などを導入したZEH(ゼッチ。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)注4対応の戸建て住宅(スマートハウス)を、積極的に導入することによって、低炭素社会の実現を目指すようになってきた。
そのような動きの中で、2017年10月、積水ハウスは、企業の事業活動で使用する電力を100%再エネでまかなうことを目指す国際イニシアティブ「RE100(Renewable Energy 100)」に、加盟したことを発表した注5。これは日本の住宅業界において初めての先進的な動きであった。
図3 Japan-CLPが日本企業の参加を支援する3つの国際ビジネスイニシアティブ
国際キャンペーン「RE100、EP100、EV100」:企業が炭素排出を減らし、気候変動の影響に対する強靭性を強めると同時に、企業利益を生み出していくことの支援を目的としている。
出所 https://japan-clp.jp/index.php
https://japan-clp.jp/index.php/re100
〔2〕先進企業5社が「Japan-CLP」を設立
歴史を遡ってみると、日本では、10年ほど前の2009年7月に、気候変動問題をビジネスの最重要課題の1つとして捉える先進企業5社(イオン、東京海上日動火災保険、富士通、三菱東京UFJ銀行、リコー)によって「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)注6」が設立され、持続可能な脱炭素社会の実現に向けて積極的な行動が開始された。
Japan-CLPは、さらに英国に拠点をもつ非営利組織「クライメイト・グループ」(TCG:The Climate Group、気候変動対策グループ)と連携注7し、TCG傘下の国際ビジネスイニシアティブであり、温室効果ガスのゼロエミッションを目指す「RE100、EP100、EV100」(図3、表3)に関心のある日本企業の参加を支援してきた。
表3 3つの国際ビジネスイニシアティブのプロフィール(2018年1月現在)
※1 https://japan-clp.jp/index.php/press/261-japan-clp-2
出所 各種資料より編集部作成
https://japan-clp.jp/index.php
https://japan-clp.jp/index.php/re100
https://www.theclimategroup.org/what-we-do/news-and-blogs/new-global-ep100-initiative-to-increase-energy-productivity-welcomes-mahindra-as-first-indian-company
この動きが加速したのは、2015年12月にCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)へ参加した全世界196カ国・地域が全会一致で採択した歴史的な「パリ協定」以降である。
すなわち、この「パリ協定」以降、全世界の先進的な企業では、その経営における事業運営の最重要事項の基本に「パリ協定」を位置づけるようになったため、温室効果ガス(CO2)排出ゼロを目指す「RE100、EP100、EV100」への参加が活発化しているのである。
〔3〕リコー、積水ハウスに続いてアスクルも
このような動きを受けて、日本からは、まずリコーが2017年4月21日注8、次に積水ハウスが2017年10月20日に、「RE100」へ参加表明した。これに続いて、アスクルが世界で初めて「RE100」と「EV100」の両方に2017年11月28日に同時加盟することを発表注9した。
「RE100」には、世界からすでにイケア、アドビシステムズ、BMWグループ、コカコーラ、フェイスブック、GM、グーグル、HP、マイクロソフト、ナイキ、スターバックスなど、世界をリードする国際的企業群が119社も加盟している(2018年1月現在)。
▼ 注4
Net Zero Energy House。新築住宅の平均で住宅の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅。
▼ 注6
https://japan-clp.jp/index.php
▼ 注7
https://japan-clp.jp/index.php/press/261-japan-clp-2