[低炭素社会の実現へ向けて住宅ビジネスに新しい波]

低炭素社会の実現へ向けて住宅ビジネスに新しい波 <前編>

スマートフォン/AIスピーカー/HEMSのIoT社会基盤をベースに
2018/02/08
(木)
奥瀬 俊哉 コントリビューティングエディター/インプレスSmartGridニューズレター編集部

住宅分野におけるIoT活用を目指すハウスベンダの取り組み

〔1〕進化するHEMSの役割

スマートホームに家庭用エネルギー管理システムとして導入されたHEMS製品は、従来のような家庭用のエネルギー管理システム中心から脱皮し、現在は、地球温暖化対策に向けて室温効果ガス(CO2)を削減し、低炭素社会の実現へ向けた新たなビジネスフェーズへとシフトし始め、スマートフォンや家電、AIスピーカーなどと連携した新たなパラダイムシフトを展開し始めている。

スマートフォンとHEMSを連携したサービス事例には、大和ハウス工業やLIXILからAIスピーカーと連携した製品が公表されている。また、スマートフォンに視点を置いたサービス事例では、伊藤忠都市開発のマンション居住者からのさまざまな問い合わせをLINE上で対応することを実現し、新たなサービスとして提供している。

次に、この3社の内容を概観してみよう。

〔2〕大和ハウス工業:Daiwa Connect

大和ハウス工業は、戸建住宅のIoT化を進め、さまざまな住宅設備や家電がつながることによって、より一層、利便性が高い暮らしの提供を目指すコネクテッドホームブランド「Daiwa Connect」(ダイワ コネクト)プロジェクトを開始し、2018年1月から顧客に提案を開始することを発表した(図2)。

図2 各機器を「つなげる仕組み」のイメージ

図2 各機器を「つなげる仕組み」のイメージ

コネクテッドホームを普及させるためには、生活者のニーズに合わせたサービスを充実させることが重要なため、各機器を「つなげる仕組み」が必要である。そこで同社では、今後は、グーグルやイッツ・コミュニケーションズとの連携など、オープンイノベーションを活用することで、さまざまな企業とのコネクト環境の整備に取り組む。
出所 http://www.daiwahouse.com/about/release/house/20171122095541.html

その第一弾として、2017年11月23日から、「Google アシスタント」を搭載し音声で動作するスマートスピーカー「Google Home」と、東急グループのイッツ・コミュニケーションズの「インテリジェントホーム」)を活用した「Daiwa Connect」の実証実験を、渋谷展示場(東京都渋谷区)とジーヴォΣ グランデ展示場(大阪府吹田市)の2カ所で開始している。

さらに、東京、名古屋、大阪などで、2018年1月6日から、戸建住宅の建設を計画している顧客に対して、「Google Home」を活用したコネクテッドホーム「Daiwa Connect」の提案を開始している。

〔3〕LIXIL:住まいのIoTリンクシステム

 住まいと暮らしの総合住生活企業であるLIXILは、より便利で安心な「これからの住まい」を実現するため、家電やデジタル機器だけではなく、玄関ドアや窓シャッターなどの建材まで、IoT技術でトータルにつながる、住まいのIoTリンクシステムを開発した(図3)。

図3 住まいのIoTリンクシステムのイメージ

図3 住まいのIoTリンクシステムのイメージ

出所 http://newsrelease.lixil.co.jp/news/2017/070_company_1204_02.html

同社は、このシステムを建材とAIスピーカーを連携させた国内初の商品として、2018年4月から全国で発売する。

主な利用例は、次のとおりである。

(1)建材・設備・家電製品等の遠隔操作

家庭内の照明や家電製品、給湯設備、窓シャッターなどさまざまな設備を、スマートフォンのアプリから遠隔で操作できる。外出先から消し忘れた照明やエアコンをOFFにしたり、帰宅時間にあわせてお風呂を沸かしておいたりもできる。また、外出したあとに戸締りをしたかどうか不安になった際にも、アプリからカギの開閉履歴をチェックし、遠隔から戸締りをすることも可能になる。

(2)センサーや音声認識による自動制御

AIスピーカーによって、自宅のさまざまな設備の一括管理が可能となる。

出かける際に、AIスピーカーに一声かけるだけで、照明やエアコンをOFFにしたり、シャッターを閉めたりすることも可能になる。また、玄関ドアの開閉との連動も可能なので、帰宅時に玄関のドアを開けると同時に照明が点灯するように設定することもできる。

(3)留守宅や実家の見守り/防犯

住宅内に設置した各種センサーやカメラを一括管理することによって、外出先からスマートフォンで自宅の見守りが可能になる。玄関に設置したIPカメラの人感センサーによって、子どもの帰宅や不審者の侵入などについて、すぐに動画付きメールで確認できる。

〔4〕伊藤忠グループ:クレヴィアホットラインサービス

伊藤忠都市開発と伊藤忠アーバンコミュニティは、「LINE」のアプリケーション上で、マンション購入者からの問い合わせに素早く回答する「クレヴィア ホットライン」を開発し、すでに2015年3月の入居開始の新築分譲マンション「クレヴィア原宿」を皮切りに、順次サービスを開始している。

 同サービスでは、これまでマンションを購入者から同社のマンションコールセンター「アイフロント24」に寄せられた膨大な質問や問い合わせと回答をデータベース化し、最適な情報を抽出するシステムを構築し、素早いレスポンスを実現している。

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