なぜ、バイオマス発電「Volter40」だったのか?
写真1 フォレストエナジー 代表取締役 沼 真吾 氏(左)と秋田県信用組合 理事長 北林 貞男 氏(右)
出所 編集部撮影
編集部 北秋田市で最初にVolter(ボルター)社のバイオマス発電「Volter40」の導入を決めたのは、どのような背景からでしょうか?
北林 ご存知の通り、秋田県は「あきたこまち」(米)に代表される農業、「秋田すぎ」に代表される林業などが盛んな県です。そこで、北秋田市では、恵まれている豊富な森林資源を活用して秋田を元気にしようと将来を見越して、2015年頃から図1に示す関係者の間で、バイオマス発電の導入を検討してきました。
表1 秋田県信用組合およびフォレストエナジーのプロフィール(敬称略)
出所 右のURLをもとに編集部で作成、https://www.akita-kenshin.jp/ https://forestenergy.jp/
図1 「バイオマス発電」(Volter40)実施体制(道の駅「たかのす」への導入)
出所 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/joho-12.pdf をもとに編集部で作成
この検討の結果、フィンランドのVolter社〔本社はフィンランド・ケンペレ(Kempele)〕が開発した環境負荷の小さい再エネ発電である「Volter40」(超小型木質バイオマス熱電併給設備。図2、表2)の導入を決定しました。
図2 超小型木質バイオマス熱電併給設備「Volter40 Indoor」(室内型)の外観と構成
出所 ボルター秋田の資料をもとに編集部で作成
表2 超小型木質バイオマス熱電併給設備※1「Volter40 Indoor」の仕様
※1 日本ではコジェネレーションシステム(コジェネ)と呼ばれることもある。
※2 力率:有効に活用される電力の割合のこと。交流(AC)の電気では、電圧が変化すると電流は少しズレて変化する(これを位相差という)ため、消費電力(W)=「電圧(V)」×「電流(A)」の計算式どおりとならず、無効電力が発生する。例えば、発電機に送り出されたAC400Vの電圧が10Aの電流を使って使用されているとき、電力が100%有効に使われていれば全消費電力は4,000W(=400V×10A)となる。しかし位相差によって、実際に消費される電力は3,200W(有効電力)とすると、80%〔=3,200W(有効電力)÷4,000W(全消費電力)〕だけが有効に活用されたことになるため、これを「力率80%」という。なお、直流(DC)の場合は電圧と電流はズレない(位相差はゼロ)ので、力率は100%となる。
出所 各種資料をもとに編集部で作成
編集部 それは、非常にタイミングのよい決定でしたね。
北林 この決定時点、すなわち今から5年ほど前の2016年3月に、東京ビッグサイトで開催されていた「第1回国際バイオマス展」にタイミングを合わせて、北秋田市長 津谷永光(つや えいこう)氏や秋田県信用組合、秋田県などの関係者の同席のもとに、記者会見を行いました注3。
当時は、地球温暖化対策(脱炭素化)に向けてCOP21でパリ協定が採択され(2015年12月)、またSDGsなどへの関心も高まっていましたので、日本初の「Volter40」1号機の導入は地元新聞にも取り上げられ、大きな注目を集めました。
また、最近開催されたCOP26(2021年10月31日〜11月13日)では、米国と中国が、地球温暖化にCO2の20倍も影響があるといわれる農地や牛のゲップなどから排出される「メタンガス」(CH4)の削減に取り組むことが発表注4されましたが、私たちの「再エネと新しい農業の普及」への取り組みが、少しでも温室ガス効果の削減に寄与できるよう願っています。
▼ 注1
バイオマス(Biomass)とは、生物資源(Bio)の量(Mass)を表し、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)」のこと。このうち、木材からなるバイオマスのことを「木質バイオマス」と呼ぶ。
▼ 注2
フィンランド製の超小型木質バイオマス熱電併給設備(詳細は表2参照)。
▼ 注3
https://www.atpress.ne.jp/news/91494
▼ 注4
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211111/k10013343361000.html