[「環境とビジネス」を一体にした新パラダイムへパリ協定はどう達成すべきか]

「環境とビジネス」を一体にした新パラダイムへパリ協定はどう達成すべきか《前編》

― COP23の詳細とRE100参加企業・積水ハウスの取り組み ―
2018/03/19
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

海外企業の環境やエネルギーのルールが日本を襲撃する

末吉 今後、日本にとって一番困るのは、海外の企業が採用する環境やエネルギーに対するルールが、商取引のルールとなって日本を襲うということです。

先ほどのアップルが日本のサプライヤーに要求するRE100というのは、その典型的な例です。

〔1〕アップルのルールが全世界のルールへ

末吉 これは、日本の経済産業省がルールをつくらなくとも、海外のアップルがルールをつくって普及させた途端、国境を越えて全世界のルールになってしまうということなのです。このルールに従えないならお引き取りください、となってしまうのです。

 ですから、ここでいうビジネスの意味するところは、本当にサプライチェーンに残れるか、残れないか、あるいは入れるか、入れないかのゲートの役割を果たすようになってきたのです。なぜ、そうなったのか。それは、先ほど石田さんがおっしゃった、世界をリードするような優秀な人が、見えないところで動いているからだと思います。

〔2〕求められる世界の情報をキャッチアップする体制

末吉 私のこれまで経験でいえば、政府においても、NGOにおいても、この人はすごいなと感じる人がいます。そのような人たちが強い思いをもって、世界を変えたいと活動しているのです。その活動の一端が、ある日突然浮上してくるわけです。しかし、残念ながら日本国内にいるとそのような活動が見えません。ですから日常的に、そのような情報をキャッチアップできるような体制が必要です。

 また、企業の行動を新しく変えようとする場合には、自社だけを改革するのではなく(部分的ではなく)、関連企業やサプライチェーンすべてに及ぶようなルールづくりが重要となってきています。

 低炭素化時代に新ビジネスを展開するには、戦略的にそのような考えや体制が肝心なのです。

(後編につづく)

◎Profile(敬称略)

末吉 竹二郎(すえよし たけじろう)

一般社団法人 グリーンファイナンス推進機構 代表理事
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) アジア太平洋地域 特別顧問

鹿児島県生まれ。
1967年東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。
1989年より米州本部に勤務。ニューヨーク支店長、取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取を経て、1998年6月、日興アセットマネジメント副社長。
2003年7月に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEPFI)特別顧問、2013年5月に一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 代表理事に就任し、現在に至る。

石田 建一(いしだ けんいち)

積水ハウス株式会社 常務執行役員
環境推進部長 兼 温暖化防止研究所長

東京生まれ。工学博士。一級建築士。1985年、工学院大学大学院工学研究科建築専攻(博士課程)を修了後、積水ハウス株式会社に入社。東京設計部に配属され、商品開発部課長、ICT推進部長を経て、2006年 温暖化防止研究所長。2011年 環境推進部長と同研究所所長を兼任。2012年 執行役員、2016年に常務執行役員に就任、現在に至る。
2001年には自邸で環境・省エネルギー住宅賞の国土交通大臣賞受賞。

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