パリ協定はビジネスが後押しした
〔1〕「We Mean Business」―我々は本気です
末吉 今の石田さんのお話を、ビジネスという面から補足しますと、COP21でパリ協定が成立したことには、いろいろな要素がありますが、そのうち最大の要素は「ビジネス」が後押ししたことです。ビジネスといえば、当然、投資家も関心を示しますから、これと金融と一緒になったビジネスが、パリ協定成立の背中を押したのです。
その理由は簡単です。「従来のビジネスの基盤が壊れ始めた」という危機感が非常に強くなってきたからです。このままいくと、今後、企業はビジネスができなくなってしまうという危惧が生じてきたのです。
そこで、COP21でパリ協定が掲げる目標の実現に向けて後押しした「We Mean Business」注7というグループが組織されました。英語で‘I Mean Business’とは、「私は本気です」という意味です。「We Mean Business」というのは、「我々は本気で、ビジネスの問題としてこれ(パリ協定)を考えています」というグループですね。優良企業がたくさん参加し、現在も活発な活動をしています。
これは明らかに、石田さんがおっしゃるとおり、「気候変動だから大変だ。自然を守ろう」というような、いわゆる環境の視点からの話ではなく、「ビジネスの存続」や「ビジネスにとってのリスク」と同じように、ビジネスにとって考えなくてはならない、避けられない重要なテーマになってきたのです。
〔2〕積水ハウスがRE100に加盟した背景
─編集部:積水ハウス(表2)は、JCLPで積極的に活動されていますが、ビジネスの観点ではどのように見ていますか?
表2 積水ハウス株式会社のプロフィール(敬称略)
※ https://www.sekisuihouse.co.jp/company/newsobj1177.html
出所 http://www.sekisuihouse.co.jp/company/info/outline.htmlをもとに編集部で作成
石田 多くの方からCOPに行ってどう変わりますかと、よく聞かれるのですが「何も変わりません」と答えています。その理由は、後出の図5に示す「積水ハウスの環境戦略の歴史」をご覧いただくとおわかりになると思います。当社は、すでに10年前の2008年に「2050年ビジョン」を発表し、「脱炭素宣言」行っています。
すなわち、住まいのライフサイクル全体で2050年までにCO2をゼロにすると宣言したのです。これは日本で一番早い宣言だったと思います。このビジョンの実現に向けて、2009年からCO2を50%削減する「グリーンファースト」(環境配慮住宅)を販売し始めました(図3)。さらに、2013年にはネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH:ゼッチ)の販売を開始し、2016年にはCO2を1990年比で80%削減するまでになり、着々と脱炭素に向けてビジネスを展開しているところです。
図3 「グリーンファースト ゼロ」によるエネルギー収支ゼロ住宅(ZEH)の仕組み
出所 http://www.sekisuihouse.com/products/greenfirst/zero/index.html
さらに、図4に示すように、日本初の全住戸ZEH分譲マンション「グランドメゾン覚王山菊阪町」(名古屋市千種区)も2017年11月11日から分譲を開始しています(2019年2月完成予定)。
このような流れの中で、2017年10月に国際的イニシアティブである「RE100」注8に加盟し、RE100宣言をいたしました。
図4 日本初の全住戸ZEH分譲マンション「グランドメゾン覚王山菊阪町」(名古屋市千種区)
※2019年2月完成予定(2017年11月11日から分譲開始)
出所 http://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2017/11/08/20171108.pdf
▼ 注7
https://japan-clp.jp/index.php/news2015/76-we-mean-business
https://www.wemeanbusinesscoalition.org/about/
▼ 注8
RE100:Renewable Energy 100、事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際組織。2014年9月設立。アップル、フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、コカコーラ、ナイキ、イケア、GM、BMWグループなどの先進企業119社が加盟している(2018年1月現在)。