OpenADRの動向
DistribuTECH2018に先立って2018年1月16日に配信されたOpenADRアライアンスのプレスリリース注2のタイトルは、‘OpenADR Alliance to Showcase OpenADR DER Solutions and Ecosystem at DistribuTECH 2018’(OpenADRアライアンスがDistribuTECH 2018で、OpenADR DERソリューションとエコシステムを展示)になっており、次のように紹介された。
「OpenADR standard helps utilities manage the growing pool of distributed energy resources (DER), which includes renewable energy, energy storage, demand response and electric vehicle charging. The OpenADR standard supports communications to all DER resources to manage changes in load shape, energy inputs and power characteristics of DER assets」
(OpenADR規格は、電力会社が再エネ、エネルギー貯蔵、デマンドレスポンス、電気自動車の充電など、分散型エネルギー資源(DER)を管理するのに役立つ。同規格は、DERの負荷カーブや電力特性を管理するために、DER資源との通信をサポートしている)
実際にOpenADRのブースは人が絶えず、OpenADRアライアンスのマネージングディレクターのバリー・ハウザー(Barry Hauser)氏、テクニカルディレクターのロルフ・ビーナート(Rolf Bienart)氏は、休む暇がないほどブースの来訪者と常に議論している状態であった。
OpenADRアライアンスの各社の取り組み
次に、OpenADRアライアンスのブースで共同展示していた各社の取り組みを紹介することで、OpenADRの現状や今後の動向を考察したい。
OpenADRアライアンスのブースの位置は、図1に示すように、ホール入口のメインブース群ではなかったものの、中央のメイン通路に近い場所であり、人通りが途切れないブースであった。
図1 OpenADRアライアンスのブースの位置(会場マップ)
出所 http://events.pennwell.com/DTECH2018/Public/EventMap.aspx?shMode=E&ID=62210
続いて、OpenADRアライアンスのブースで共同展示を行った企業と、そのソリューションを紹介する(写真1)。
写真1 OpenADRブース付近の様子
出所 著者撮影
〔1〕Greenlots
米国のベンチャー企業で、OpenADR準拠のVEN(Virtual End Node、仮想終端ノード:メッセージの受け手)を活用し、EVバッテリーの制御やEVバッテリー電源のグリッドへの取り込みを管理する「SKY」というプラットフォームを展示していた。
先述したように、今回のDistribuTECHではDERをどうやってグリッドに取り込むかが大きなテーマになっていたが、なかでもGreenlotsのEVネットワーク技術は大きな注目を集めていた。
〔2〕Gridwiz
韓国のベンチャー企業で、OpenADR2.0b準拠のVTN(Virtual Top Node、仮想先端ノード:メッセージの送り手)とVENを開発している。Gridwizのソリューションは、600MWhのDR(デマンドレスポンス)容量と65MWhのESS(Energy Storage System、エネルギー貯蔵システム)に採用されている。
〔3〕Kyrio
IoT機器の通信セキュリティのソリューションを開発している企業である。OpenADRでは、PKIセキュリティ(PKI:Public Key Infrastructure、公開鍵基盤)のプロバイダとして連携している企業である。
展示会でもIoT機器間をセキュリティの高い通信でつなぐデモを実施しており、活況だった。
〔4〕BPL Global
DRを使ったデマンド制御システムでは古株に入るベンチャーである。DistribuTECHでも、OpenADRに準拠したデマンド制御システムのデモを行っていた。
OpenADRのテストハーネス注3を開発・販売する企業として、その分野では有名な企業である。テストハーネスという機器の性格上、標準規格のトレンドや市場動向に通じており、さまざまな人がブースを訪れ情報交換を行っていた。
今回はOpenADRのテストハーネスも展示していたが、最近、カリフォルニア州でスマートインバータ(再エネを多様な制御によって系統の安定化を図る技術)の標準規格に指定されたIEEE 2030.5〔SEP 2.0(Smart Energy Profile 2.0)アプリケーションプロトコル標準注4〕のテストツールも展示されていた。
〔6〕西原エネルギー
図2に示すように、OpenADR認証取得済みのVENと、開発中のVTN間でDRイベントを送受信するデモを展示した。
図2 デマンドレスポンス(DR)ソリューションのシステム概念図
VTN:Virtual Top Node、仮想先端ノード VEN:Virtual End Node、仮想終端ノード
xEMS:各種(例:HEMS、BEMS、CEMS等)のエネルギー管理システム
負荷機器:例えば家庭やビルの照明機器や空調機器等
出所 西岡エネルギーの資料より
▼ 注2
http://www.openadr.org/press-releases
▼ 注3
テストハーネス:ソフトウェア試験で用いられるテスト実行用のソフトウェア。
▼ 注4
https://standards.ieee.org/findstds/standard/2030.5-2013.html