進化・発展するSORACOMプラットフォーム
ソラコムは、2015年に創業し同年9月にSORACOMサービスを開始したIoT分野の先端企業である。SORACOMサービスは、同社で開発されたSORACOMプラットフォームをベースに、現在も進化・発展を続けている。
このたびソラコムは、2018年5月9日から「SORACOM Air for セルラー plan-K」(K:KDDI)のサービスの提供を開始した。これによって、「SORACOMプラットフォーム」は、LTE/3Gなどのセルラー分野では、NTTドコモ回線「plan-D」(D:DOCOMO)とKDDI回線「plan-K」という2つの巨大なキャリア回線と連携することが可能となり、新世代の「SORACOMプラットフォーム」へと進化することになった。
これまで、SORACOMプラットフォームは、図1に示すように、基本的な内容として、
(1)LTE/3Gなどのセルラー(モバイル移動通信システム)や、IoT向けLPWA注1(LoRa-WANやSigfoxなど)と、
(2)アマゾンのAWS、マイクロソフトのAzure、グーグルのGoogle CloudおよびSORACOMパートナーのクラウドなどの複数のクラウド
を連携させ、「無線に依存しない、クラウドに依存しない」で、どのような使い方にも同じように対応できるプラットフォームを提供してきた。
〔2〕欧州・米国・シンガポールにも進出
ソラコムは、2017年8月にKDDIのグループに参画し、KDDIとの基盤統合によってさらにマーケットを拡大している。2018年5月には、顧客(ユーザー企業)数は、大企業からスタートアップ企業に至るまで10,000(個人を含むユーザーアカウント数)を超え、さらに米国、欧州とシンガポールなどに拠点を構えるなど、積極的な海外展開も行っている。
〔3〕SORACOMプラットフォームの特徴
IoT実現の共通基盤である「SORACOMプラットフォーム」は、次のような特徴を備えている(図1、図2)。
図1 あらゆる無線とクラウドをセキュアにつなぐSORACOMプラットフォーム
Wireless Agnostic:無線に依存しない、Cloud Agnostic:無線に依存しない
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
図2 SORACOMプラットフォームの構成
サービスはSORACOM Air~Junction(DだけDirectとDoorの2つ)の11種類
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
(1)「SORACOM Air」から「SORACOM Junction」まで、アルファベット順に11種類(DのみDirectとDoorの2つ)のサービスを提供している。それらのサービスは、IoT向けデータ通信レイヤサービス「SORACOM Air」をはじめ、ネットワークレイヤサービス(Canalなど5種類)、アプリケーションレイヤサービス(Beamなど5種類)など計11種類が提供されている(図2、https://soracom.jp/services/)。
特に、「SORACOM Air」は、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」において、データ通信の接続性を提供する主軸のサービスである。SORACOM Airは、これまでセルラー(2G/3G/LTE)、LoRaWAN、Sigfoxの3つの通信規格に対応。このうち、セルラーに対応する「SORACOM Air for セルラー」は、データ通信SIMカードによって、セルラー網を利用するサービスであり、これまでは国内向け(NTTドコモ回線、plan-D)とグローバル向け(plan01s)が提供されてきた。
(2)また、11種類のサービスのうち、セキュアな閉域網サービスでは、「SORACOMプラットフォーム」と「複数のクラウド」を、専用線接続(Direct)したり、VPN(仮想専用線)接続(Door)したりすることが可能となっている。
(3)このプラットフォーム機能をグローバル展開するため、グローバルSIMを2016年12月に米国市場で、2017年2月に欧州で提供を開始した。これによって、世界100カ国以上で機器をつなぐことが可能となった。このSIMは、カード型のSIMだけでなく、通信デバイスに組み込めるチップ型SIM注2も、2017年の10月から販売開始されている(写真1)。
写真1 従来のカード型SIMとチップ型SIMの外観
※国内向け(NTTドコモ回線、plan-D)とグローバル向け(plan01s)を提供
※2016年12月に米国、2017年2月に欧州でグローバル向けSIMのサービスを開始。現在は複数の通信キャリアと契約し、日本、欧米、アジアを含むグローバルな国と地域に展開。
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
(4)さらに、SORACOMに関する技術資料やマーケティング支援などのサポートを提供するSPS(SPS:SORACOM Partner Space、SORACOMのパートナープログラム)も強化されている(表1)。すでにSPS認定済パートナーは96社に達し、さらにSPS申請パートナーは440社を超える勢いだ(2018年5月9日現在)。
表1 SORACOM のパートナープログラム(SPS:SORACOM Partner Space)
※1 SPS認定デバイス90種類以上:ゲートウェイ、ルータ、通信モジュール、モバイル/ドングル、車載/GPSデバイス、カメラ/特殊デバイス等
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
▼ 注1
LPWA:Low Power Wide Area、IoT向けの省電力型・広域無線通信ネットワーク
▼ 注2
チップ型SIM:MFF2(Machine to machine Form Factor 2)と呼ばれる5㎜×6㎜と小さいサイズのICチップにSIMの機能を搭載している。通信デバイスに組み込んで利用できる。電子基板上に直接組み込むため振動などに強く、車載や工業製品などM2M/IoT向けに最適なSIMとなっており、SORACOMの各種サービスを使用することができる。なお、組込み型SIMをeSIM(embedded SIM)という。