Energoシステムで使用されている主なテクノロジー
〔1〕Qtumのブロックチェーンプラットフォーム
Energo LabsがQtum(クアンタム)を選択した主な理由は、以下の通りである。
- SegWit注6が採用されている点。これによりブロックのサイズを拡大でき、より多くの処理が1つのブロックで行われることで、新しいブロックをマイニング(採掘)する時間を削減できる。
- 1ブロックの容量が2Mバイトと比較的大きいという点。
- PoS(Proof of Stake)注7が使われている点。
- 分散型プロトコルにより、高い取引手数料やネットワークの輻輳といった問題を減少することができる点。
- 「UTXO」注8モデルのブロックチェーンである点。
- 1つのアドレスに複数の秘密鍵を割り当てる「マルチシグネチャ」である点。
- スマートフォンアプリで簡単に支払い認証が行える点。
これらを考慮した結果、Energo Labsのプロジェクトを始動する際に、Qtumのブロックチェーン技術を最適だと考えた。
〔2〕2つのトークン:WATTとTSL
Energoシステムにおける電力取引では、2種類のトークンが必要となる。
(1)Energoのエネルギー資産:WATT
WATT(ワット)は、ブロックチェーン上で電力量を計算するための単位である。1WATTは、マイクログリッド内もしくはその他の蓄電池に蓄えられている1kWhの電力と同等の価値をもつ。例えば、ユーザーが10kwhの電力を保有している場合、スマートメーターなどで計算できるようにするため、「10WATTトークン」と計算する。
Energoのシステムでは、スマートコントラクトからWATTトークンを生成し、家庭に設置された太陽光パネルなどを介して電力を支給する。また、スマートメーターでリアルタイムに電力消費をモニタリングすることで、(スマートメーターまたは充電スタンドで)秘密鍵シグネチャースクリプトが生成され、使用済み電力相当のWATTトークンは指定されたコイン焼却アドレスへ送られ、トークンは消滅する。
(2)Energoエコシステム資産:TSL
TSL(Tesla、テスラ)は、蓄電池へのアクセス権といえる。電力を蓄電池に貯めておくために必要な仮想通貨で、電力の生産者と消費者の両者は、TSLでのみ取引が可能なため、TSLトークンの所有が必須となっている。
現状では、TSLと法定通貨の両方を使用して電力購入が可能であるが、利用する国や地域の規定によっては仮想通貨で電力などを購入することが禁止されている場合もあり、その場合は現地通貨で購入が可能ということである。
同システムでは、公平かつ有効にエネルギー(電力)資産を使用するため、マイクログリッド内にある蓄電池に15分間電力を貯蓄するごとに、手数料がかかるようになっている。
これらの収益の80%は、その地域コミュニティで使われる蓄電池のオーナーの利益となる。電力生産者の利益は、蓄電池に貯蓄された電力量に相応する。10%は、マーケティング予算として、新しいユーザーの誘致や少額のTSLトークンを新規ユーザーに付与し、システム使用体験を促すなどのプロモーション活動にあてられる。残りの10%は、Energoの手数料として、プラットフォームやネットワーク管理に使用される。
Energoは10億TSL以上のトークンの発行はせず、将来増加することもないとしている。
▼ 注6
SegWit:セグウィット。Segregated Witnessの略語で、トランザクションを圧縮してデータ量を小さくする処理のこと。既存のソフトウェアと互換性を保ったまま、ブロックの容量をおよそ4倍に増やせるようになる。
▼ 注7
これにより、PoW(Proof of Work)と異なり、「電力問題や51%攻撃の危険性を軽減」しているという。仕事量をもとに正確さや処理能力を定義(PoW)すると、「マイニングすればするほどいい=電力費がかなりかかる」ことになり、これを回避している。また、仮想通貨の保有量が多いほど取引の承認権(新しいブロックをブロックチェーンに繋ぐ権利)を得やすい仕組みであれば、ブロック内の情報を51%以上ハッキングされる危険性を軽減できるという。
▼ 注8
UTXO:Unspent Transaction Outputの略で、まだ送金されていないビットコインの情報を表す。直接アドレスに残高を紐付けて記録する「アカウントベース」ではなく、UTXOが残高データとつながっているため、匿名性やプライバシー面で優れているといわれている。