表1 記事中の主な用語解説
出所 https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/0725_1j.htmlを参考に編集部で加筆して作成
2つの実証の概要
今回の2つの実証には、表2に示す5者が参画している。
表2 実証における各社の役割と各社の概要(敬称略)
出所 https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/pdf/0725_1j_02.pdfをもとに編集部で作成
関西電力がVPP実証の協力者・環境価値取引実証の実施主体、イオンおよびイオンモールが実証フィールドの提供者、エネゲートがVPP実証の実施主体である。さらに堺市は、EVの提供および市民へのモニター参加募集などの協力を行う。
実証期間は2019年7月〜2020年3月の予定で、実証内容は、
①V2H・EV充電器を活用したVPP実証
②ブロックチェーン技術を活用した環境価値取引実証(BC実証)
の2つである。実証場所はそれぞれ、イオンモール堺鉄砲町と関西電力技術研究所巽実験センターとなっている(図1)。
図1 V2H・EV充電器を活用したVPP実証のイメージ
イオンモール堺鉄砲町でのVPP実証
VPP実証では、イオンモール堺鉄砲町の来客用駐車場に、V2H・EV充電器を2台ずつ設置(図1の中央)し、堺市内のEV所有者を対象にモニター参加を募集する。
実証期間中にモニターに対して、EVを利用して来店してもらい、充放電してもらうよう要請する。来店時にV2H・EV充電器を制御して充放電を行うことで、EVをVPPに活用する実証を行う。
なお、今回のVPP実証の設備設置やシステム構築には、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」が活用される。
関西電力技術研究所巽実験センターでの環境価値取引実証
一方、環境価値取引実証の場合は、関西電力技術研究所巽実験センターの実験ハウスに設置された太陽光パネルで発電した電気を、関西電力およびエネゲートが所有するEVに充電し、その充電した電気を、ブロックチェーン技術を用いて充電量を管理する。
EVをイオンモール堺鉄砲町に移動して放電する際、環境価値をもつ太陽光発電由来の電気の放電量を把握することで、EVを活用して、電気とともに環境価値を移管する環境価値取引実証も行う(図1。対価としてWAONポイントなどの特典を得る)。
「イオン脱炭素ビジョン2050」の達成につなぐ実証へ
イオンは、「脱炭素社会」の実現を目指して、日本の大手小売企業として初めて国際イニシアチブ「RE100」(表2参照)に参加し、またイオンモールは、日本企業として初めて「EV100」(表2参照)に参加している。今回得られた実証結果から、EVのVPPへの活用方法や家庭の太陽光発電の環境価値取引につながる新たな知見を獲得し、「イオン脱炭素ビジョン2050」の達成につなげていくとしている。
今回の実証内容が現実のものとなれば、EVを「走る蓄電池」として活用することで、2019年11月からの卒FITによって、太陽光発電設備を設置している需要家は、太陽光で発電した余剰電力とその環境価値をマネタイズできるようになる。さらに、イオンモールなどのショッピングセンターは、クリーンな電力と環境価値を入手できるようになる。