世界と日本市場への戦略
Energo Labsは、すでにフィリピンにおいてDAEコミュニティの導入プロジェクトを開始している(表2参照)。また、東南アジアでのさらなるプロジェクト展開のため、2018年4月、シンガポールに第1号の国際ハブ(Hub)を設立した。
表2 フィリピンにおけるDAEプロジェクトの概要
出所 Energo Labs提供資料より
同社のDAEコミュニティプロジェクトのターゲットは、現在インド、タイ、シンガポールなどの東南アジアでとされ、より集中的に同エリアのプロジェクトを行えるよう、シンガポールにハブをオープンしたという。インドにおいてもDAEコミュニティ設立プロジェクトの着手へ向けて、現地パートナー企業との協議が進められている。
DAEコミュニティプロジェクトは、2018年末までにアジア圏内でより多く、より大規模のDAE Energo Labs エコシステムの構築を目標としている。
同社のこれまでの取り組みと今後のロードマップについて、図6に示す。
図6 Energo Labsのこれまでの主な取り組みとロードマップ
出所 Energo Labs ホワイトペーパーより
多くの地域で同社のシステムが実働すれば、「エネルギーコストの削減」「地震災害時のエネルギー供給」「脱炭素社会の実現」などに大きく貢献することが期待できる。同社のシステムは、電気の自由取引が可能で、かつマイクログリッドにおけるエネルギーの供給も可能であるため、同社は、日本市場においてこのシステムの需要があると見込んでいる。
また、Energo LabsのDAEコミュニティを応用して、電力供給が行われていない発展途上国への技術普及なども視野に含めた日本企業とのパートナーシップをもとに、共同プロジェクトを計画している。
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Energo LabsのDAEコミュニティは電気代削減に留まらず、人々が太陽光パネルを設置し、収入源とする機会を都市や地域、農村部にもたらすといえる。また、場所や経済状況に合わせて、複数の地域で展開することを目指しているため、多くの地域で実働できれば、エネルギー分野の変革ともなろう。
Energo Labsのように、デジタル化された電力などのエネルギーをデジタル資産として用いることで、共有EVチャージ、利用者のID管理やデジタル会計処理など、新しいビジネススタイルをサポートすることも可能になるかもしれない。
政府による積極的な再エネ導入への取り組みを行う国も多く、補助金を導入するケースもあるが、近年は減少傾向にある。日本においても、2019年にはFITが終了するという状況を迎える。このため、補助金に頼らない自由な再エネ電力取引市場で、すべてのステークホルダーが利益を得られる新たな仕組みが必要となる。
そのような観点から見ると、同社の再エネ電力取引システムは、従来の送電網のあり方や事業運営に対して、新しい価値と新しいビジネスを創出するプロジェクトであると考えられる。