産業革命の本質と歴史的に見た日本の勝敗
〔1〕米国、韓国、中国勢の攻勢にあい国際競争力を失墜
ここで、産業革命の本質と歴史的に見た日本の勝敗を見てみよう。
図2に示すように、日本は第2次の工業社会Ⅱでは善戦したものの、最近の第3次産業革命(情報社会Ⅰ)において、通信・半導体・コンピュータ技術関係の分野で振るわず、米国勢(Apple、Google、Facebook、Amazon、Intel)、韓国勢(サムスン、LG)、中国勢(ファーウェイ、ZTE、バイドゥ、アリババ、テンセント)などの攻勢にあい、国際的な競争力を落とし、大きく市場シェアを失う事態になっている。
図2 産業革命の本質と歴史的に見た日本の勝敗
出所 藤原 洋、「IoT/AI時代のオープンイノベーションによる日本創生戦略」、2018年7月31日
これを図3に示す具体的な数値で見てみると、日本の1994年時点のGDPは、米国にかなり接近した2位であったが、20年後の2014年には、先進国の中で日本だけがGDPをドルベースで減少させている。一方、米国、英国、フランス、ドイツ、韓国などが2倍近く、中国に至っては16倍にも増大している。また、米国のMITテクノロジーレビューが、毎年、イノベーティブなトップ50という企業ランキングを発表しているが、2014年時点で、日本企業は1社もランクインしていない状況だ。
図3 GDPからの視点:日本だけが衰退(数値は各国のGDP、単位は兆USドル。カッコ内は1人当たりGDP、単位はUSドル)
出所 藤原 洋、「IoT/AI時代のオープンイノベーションによる日本創生戦略」、2018年7月31日
このような厳しい国際競争環境の中で、現在、IoTやビッグデータ、AIの技術(情報社会Ⅱ注3)を駆使して実現をめざす第4次産業革命で、日本が国際競争力を回復させ、さらに拡大できるかどうか、日本にそのようなチャンスがあるのかどうかが注目されるとともに、期待されている。
〔2〕自分の部下はコンピュータやロボット
このような世界の動きに対して、日本の人口問題の面からイノベーションを見直してみよう。OIC(IoT/AI時代におけるオープンイノベーション推進協議会)の名称に、わざわざ「IoT/AI時代における・・」と謳っているのは、「実は、日本が人口が減って高齢化・少子化していることを逆手に取ろうという発想からなのです」(藤原氏)。
これは、図4に示すように、この100年で約3倍になった日本の人口(図4の日露戦争時点で4,780万人、2000年で1億2,700万人)が、たとえほぼ3分の1(2100年頃に4,600万人)に減少しても、それを逆手に取ろうという発想なのである。すなわち、1人当たりの生産性を上げるために、人間の部下はいないが、AIやIoTなどを使ってコンピュータやロボットを自分の部下にして、生産性を上げるチャンスの到来でもある、ということなのだ。
図4 人口減少問題があるからこそAIやIoTが必要
出所 藤原 洋、「IoT/AI時代のオープンイノベーションによる日本創生戦略」、2018年7月31日
▼ 注3
第1次産業革命:蒸気機関による自動化、第2次産業革命:電力による自動化、第3次産業革命:コンピュータによる自動化、第4次産業革命:IoTによるさらなる効率化。