シーメンスがグローバルな事業戦略として2014年5月に発表した、「Vision2020戦略」(注1)は、当初の予定より早く目標を達成し、2018年8月に次の10年に向けて「Vision2020+」を発表し、推進している。
同コンセプトをさらに展開し、成長を遂げるため、2019年4月からの現体制を2020年4月までに再構築し、ガス&パワー事業を分社化する(ドイツ・ミュンヘン、2019年5月7日)。
ここでは、シーメンス(Siemens)株式会社 代表取締役社長兼CEOの藤田 研一氏が、2019年6月21日と9月24日の記者会見で発表した、同社の事業戦略をレポートする。
ガス&パワー事業を分社して更なる業績向上を図る
図1に示した2019年4月からスタートした新組織は、「スマートインフラストラクチャー」「デジタルインダストリーズ」「ガス&パワー」の3つの事業会社と、風力発電システムの「シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー」(SGRE)、鉄道システムの「シーメンス・モビリティ」、医療システムの「シーメンス・ヘルスケア」の3つの戦略会社となっている。
図1 シーメンスの2019年4月からの新体制
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
これらの総売上高は約830億ユーロ(約10兆1,260億円注2)で、日本法人でも同年4月1日付けで、同様な組織に変更している。
2020年4月からの新体制
シーメンスでは、現体制のオイル&ガス、伝統的な発電/送電とそれらに関連する事業会社の「シーメンス ガス&パワー」(GP)を分離し、再生可能エネルギー(以下、再エネ)企業である「シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー」(SGRE)と統合し、エネルギー事業の別会社化する予定となっている〔図2、SGREの過半数(現在59%)の株式をGPに譲渡〕注3。
図2 ガス&パワー事業を分社化
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
新しい戦略会社は、2020年10月までにドイツの株式市場に上場する予定である。
これによりガス&パワーの新戦略会社は、売上高270億ユーロ(約3兆2,940円)、従業員数は8万8,000人となり、在来発電、オイル&ガス、送電、再エネの各分野で世界シェア2位となり(図3)、事業カバー範囲は図4のように、左側の緑と青色の部分を中心とした展開となる。
図3 ガス&パワー事業分社後の売り上げ構成
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
図4 ガス&パワー新戦略会社の事業カバー範囲
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
▼ 注1
シーメンスグループが推進するデジタル化(Digitalization)、オートメーション(Automation)、電化(Electrification)の3つ柱を成長分野として位置づけた5カ年計画。
▼ 注2
1ユーロ122円で換算。
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