第4次産業革命とデジタルトランスフォーメーション
〔1〕IoTによる生産の効率化
現在、IoT/AI時代を迎えて、全世界の製造業の分野で、第4次産業革命に向けた取り組みが活発化している。最初に着手したドイツが2011年から推進している第4次産業革命「インダストリー4.0(推進組織:Plattform Industrie 4.0)」は、IoTによる生産の効率化を中心に据えて推進されている。
世界各国は、このドイツのインダストリー4.0に触発され、図5に示すように全世界で一斉に多彩な取り組みが行われている。こうした動きに対応して、日本のインターネット協会は、すでにIoT推進委員会を発足させている。また、経済産業省と総務省の連携の下に、IoT推進コンソーシアムが結成(2015年10月21日設立)され最近では、法人会員3,583社(2018年7月24日現在)を抱えるまでの大組織に成長している。
図5 各国の第4次産業革命の取り組みと各分野の標準化組織
出所 藤原洋「IoT/AI時代のオープンイノベーションによる日本創生戦略」、2018年7月31日
第4次産業革命は、IoT(モノのインターネット)を中心に据えて展開されることから、インターネット協会は、この第4次産業革命にも対応できる組織として、OICをスタートさせたのである。
〔2〕デジタルトランスフォーメーション(DX)
第4次産業革命は、情報科学的見地からは、「デジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation:DX)として捉えられる。DXのコンセプトは、2004年に、スウェーデンのウメオ大学(Umea University)のエリック・ストルターマン(Erik Stolterman)教授によって提唱された。
DXを今日的に表現すれば、ITを駆使することによって既存のあらゆる産業のビジネスを「デジタルへ変革」することである。DXを実現する手段として、IoTやビッグデータ、AIを使用し、実世界(フィジカルワールド)で起こるさまざまな出来事を、IoTの世界(サイバーワールド)に取り込んで一体化し集積する。この集積されたデータを適切に処理する(価値ある情報にする)ことによって、実世界をより高度に、便利にするシステム(CPS:Cyber Physical System)が実現されるのである。
このような産業のデジタル化(DX)は、自動車や家電機器の製造分野だけでなく、金融分野(銀行・証券など)、印刷分野(本・新聞など)、さらに科学分野にも起こる。すなわち、現在、あらゆる分野がDXに向かっての動きを加速させているのである。この分野で立ち遅れていた日本政府も、第4次産業革命へ向かって、本格的な取り組みに動き出した。
Society 5.0とSDGs
〔1〕Society 5.0「超スマート社会の実現」
このようなCPSの世界を実現するため、日本では第5期科学技術基本計画(2016〜2020年の5カ年)注4において、めざすべき未来社会の姿として初めて「Society 5.0(ソサイエティー5.0)」というコンセプトが提唱された(2016年1月22日)。Society 5.0とは、図6に示すように、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、人類社会発展の歴史における5番目の新しい社会の姿であり、21世紀の初頭を目途に実現する「超スマート社会」として位置付けられた注5。
図6 Society 5.0とは(Society 1.0からSociety 5.0への展開)
この「Society 5.0」は、日本におけるデジタルトランスフォーメーションのゴールとして、「誰もが快適で活力に満ちた、質の高い生活を送ることができる新たな人間中心の社会」をめざすものとなった。
〔2〕経団連がSDGs特設サイト
「Society 5.0 for SDGs」を開設
こうした動きを受けて、日本の代表的な企業1,376社が加盟(2018年5月末現在)する経団連(日本経済団体連合会)も動き出した。
2018年7月17日、経団連は、「Society 5.0 for SDGs」(SDGs注6の実現をめざすSociety 5.0)という、画期的なSDGs特設サイトを開設した(図7)注7。このサイトは、パリ協定以降、国際的な取り組みが活発化しているSDGsとも関連付けた点が注目されている。同Webサイトでは、「Innovation for SDGs —Road to Society 5.0 —」(SDGsに関連するイノベーション事例集)のほか、経団連がめざす未来社会「Society 5.0」なども解説されている。
図7 経団連におけるSDGs特設サイトのトップ画面(SDGs:色分けされた17の目標)
▼ 注5
内閣府「Society 5.0」