ヒトからモノへと変化するインターネットの利用形態
〔1〕ポータル型 ⇒ SNS型 ⇒ IoT型への進化
周知のように、オープンなインターネットの世界では、IoTを実現するベースとなるWebにおける革新が顕著である。図8上部に示すように、Webはわずか4つのシンプルな要素「HTML」「HTTP」「Webブラウザ」「Webサーバ」で構成されている注8。
図8 情報発信源の変化とネットビジネスの進化
出所 藤原 洋、「IoT/AI時代のオープンイノベーションによる日本創生戦略」、2018年7月31日
図8下部に示すように、このWebによって、①第1世代のポータル型サービスがアマゾン、ヤフー、グーグルなどの「サービス事業者」から提供され、②第2世代のSNS型サービスであるFacebookやTwitterなどが「ヒト」によって利用され、最近では、③第3世代のIoT型サービスが「機器(モノ)」によって利用される時代を迎えている。
〔2〕日本にビジネスチャンスが到来
このように、インターネットは、「ヒトを相手にしていたビジネスから、モノを相手にするビジネスへ」と大きな転換点を迎えた。情報の発信源が「ヒトでなくモノ」であるということは、日本にとっては大きなチャンス到来でもある。
第3世代(IoT型)が、第1世代(ポータル型)や第2世代(SNS型)と大きく異なるところは、言語の障壁がなくなるという点だ。つまり、第1世代、第2世代をリードした企業である、アップルやグーグル、フェイスブック、アマゾンなどはすべて英語圏の企業であった、ということである。
IoTでは、ハンディのある英語でのやり取りはなく、モノ(センサーや各種モジュールなど)からの温度情報や位置情報、CO2排出情報、映像情報などの物理量がデジタル情報としてやり取りされるだけである。日本は、この分野では、大いに勝負できる可能性がある。
実際に、もともとインターネットの利用者は、人間が基本であったため、世界の人口(2018年8月現在75億人)を超えるはずがないといわれていた。しかし、IoT時代を迎え、インターネットへのデバイスの接続数は、2020年には200億〜300億個にも達すると予測されており、これはまさに日本にとって大きなビジネスチャンスの到来でもあるのだ。
〔3〕5G商用サービスも間近
現在、IoTとAIとビッグデータなどの連携によって、その市場は全世界で大きく拡大しようとしている。加えて、5G(第5世代)という次世代移動通信の国際標準規格が完成(2018年6月、フェーズ1)し、2020年に向けて商用サービスが開始される予定だ。
5Gの商用サービスは、第4次産業革命推進の面から期待されるとともに、日本の得意とする自動車(自動運転車)産業やロボット産業、4K/8K(超高精細画像)などの映像産業を含むさまざまな産業分野においても、社会の新しいインフラになると期待されている。
めざしたいモデル例:「フランホーファーモデル」
以上のような動きを背景に、日本におけるオープンイノベーションのモデルをどのように構築し推進するか。そのすばらしいモデルの例として、ドイツのミュンヘンに本部がある「フランホーファー研究機構」(1949年3月設立)注9が挙げられた。
同研究機構はドイツ各地に72の研究所・研究施設を構え、約25,000人のスタッフを擁する欧州最大の応用研究機関である。研究費は年間約2,400億円であるが、そのうち7割が外部資金で、政府と州が出している資金は3割だけである。
また、ユニークなのは、外部資金の出資者うち、半分が大企業で、半分は中小企業という点だ。このモデルは、非常にドイツを強くしたといわれている。さらに、このフランホーファー研究機構は、ドイツの中小企業のR&D(研究開発)も請け負うなど、日本も見習うべきところが多い。
「残念ながら、日本には、こういう研究組織はありません。ないということは、誰かがやらなくてはならないのです。OICとしても、今後1つのモデルに考えていきたいですね。また日本には、現在、大学が764校(国立82校、公立87校、私立588校)、高専が51校もあります(2017年度時点)注10。このような多数の教育機関が、全国にある中小企業も含めたあらゆる企業の研究開発を担える、そういったネットワークができるとすばらしいと思っています」(藤原氏)。
OICが、日本の産業界と大学間(高専も含む)で、日本流の双方向オープンイノベーションを実現できるかどうか。国際市場で日本が勝てるシナリオが描けるかどうか。
それは、高齢化と人口減少が加速する「日本の創生」に向けた総力戦でもあり、大きな期待ともなってきている。
▼ 注8
Web:World Wide Web(ワールド・ワイド・ウエブ:WWW)のこと。英国のコンピュータ科学者ティム・バーナーズ=リー(Tim Berners-Lee)によって1989年3月に発明された。
▼ 注9
フランホーファー研究機構