北海道電力の電力設備を直撃した震度7の地震
去る2018年9月6日未明の03時07分、北海道の道都・札幌市から65km、新千歳空港から29kmの道央ベルト地帯の中に位置する北海道厚真町(あつまちょう)を、「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」が襲った。その規模は、胆振(いぶり)地方中東部でマグニチュードM6.7、深さ37km、最大震度は北海道厚真町(あつまちょう)で震度7の規模であった。
被害は、表1に示すように、死者41人、住家は全壊139棟に及ぶなど甚大であった(9月18日09:00現在の消防庁情報)。同時に、札幌市などを含む、北海道全域にわたって約295万戸の停電が発生した。
表1 「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」の概要
※マグニチュードと震度:マグニチュードは地震発生地点(震源)での大きさ(規模)を表す。「震度」は、地震発生時に生活している場所における実際の揺れの強さを表す。マグニチュードが小さい地震でも震源からの距離が近いと地面は大きく揺れ、「震度」は大きくなる。
出所 気象庁「平成30年北海道胆振東部地震」について(第7報)、平成30(2018)年9月10日
地震調査研究推進本部 地震調査委員会、平成30(2018)年9月11日
地震は北海道電力の電力設備を直撃(写真1)し、これに伴う道内エリア全域の停電は、北海道電力創立以来初めての異常事態となった。また、このようなエリア全域の停電は国際的にも珍しく、2011年3月11日に発生した東日本大震災時においても、東北エリア全域の停電は発生しなかった。
写真1 「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」による電力関係被害状況(例)
原因は、電力需給のインバランス
経済産業省は、今回の停電の原因は、電力の需給の大半を占める火力発電所が密集するエリアでの地震によって、複数の火力発電機がトリップ(停止)したことによる供給力不足が原因であると発表した。
本誌でも繰り返し紹介してきたが、電力系統の安定的な運用には適正な周波数の維持が不可欠であり、この周波数は「電力の需要(消費)」と「電力の供給(発電)」のバランスによって決まる。需給のバランスが崩れ、電力の「周波数」(北海道電力の場合は50Hz)が安定しなくなると、最悪の場合は電力システムに多大な影響を与え、大規模な停電が発生する事態となる。
このため電気事業法第二十六条注2では、一般送配電事業者は、供給する電気の周波数を、経済産業省令に定める値(標準周波数)に維持するように努めなければならないと規定されている。
例えば、表2に示すように、北海道電力では、50Hzの周波数を中心に50Hz±0.3Hz(50.3〜49.7Hzの変動範囲)という周波数調整ルールを決めて運用している。しかし、大規模な地震発生に伴う複数の火力発電機の停止によって、大幅な供給力の不足が、著しい周波数低下と発電所の波及的な停止を招き、今回の惨事に至ってしまったのである。
表2 各一般送配電事業者※の供給区域の周波数調整ルール
50Hz±0.3Hzとは、50.3Hz~49.7Hzの変動範囲を周波数調整ルールとして維持すること。
※一般送配電事業者:現在、一般送配電事業者は北海道電力、東北電力、東京電力パワーグリッド、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10者。なお、東京電力パワーグリッド以外の9者は、小売電気事業、一般送配電事業、発電事業の3事業を兼営している。
出所 電力広域的運営推進機関(OCCTO)、「電気の質に関する報告書‐平成28年度(2016年度)実績‐」、平成29年11月