地震発生後からブラックアウト(大規模停電)までの18分間の解明へ
発足した「検証委員会」の第1回会合では、地震発生の2018年9月6日の未明03時07分から03時25分までの18分間の事実経過について、図3に示す事実認定が行われた。
図3 地震発生後から大規模停電発生までの系統の状況:赤線は北海道周波数、黄線は北本連系設備の潮流〔北本七飯(ななえ)線〕
出所 電力広域的運営推進機構、本検証委員会により事実認定が行われた事象(案)、第1回平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会、資料4-2、2018年9月21日
地震発生後から大規模停電発生までの18分間の系統の状況は、大まかに時系列で見ると、下記の3つの区間〔1〕〜〔3〕のような推移であった(詳細は図3およびURLを参照注4)。
なお、各区間内で生じた事象の順序は、残された記録からの推定であり、必ずしも実際のものではないとされている。
〔1〕地震発生時:03時07分〜03時09分(2分間)
①苫東厚真火力2号機、4号機が停止、1号機の出力低下
②北本連系線(図2の右図。東北側から)から緊急受電動作開始(周波数:49.62Hz未満)
③周波数低下に伴って、負荷遮断(停電させて需要を減少)実施
④送電線故障による道東・北見エリアの停電と水力の停止
⑤周波数低下による風力の停止
⑥周波数低下が46.1Hzで止まり回復傾向へ
〔2〕周波数乱高下の区間:03時09分〜03時24分(15分間)
〔2〕―(1)周波数低下の区間:03時09分〜03時18分(9分間)
①中央給電指令所から停止中の火力・水力の起動指令
②北本連系の(東北側からの)緊急時受電等により、一時周波数が50Hz付近でバランス
③北本連系線の受電量が最大の57万kWに到達
④送電線(狩勝幹線他)復帰により道東エリア復帰
⑤需要増加(住民が地震に気づき活動開始)により徐々に周波数低下
⑥伊達火力2号機、奈井江1号機の出力増加
〔2〕―(2)周波数乱高下の区間:03時18分〜03時24分(6分間)
①苫東厚真1号機徐々に出力低下
②周波数低下により負荷遮断を実施。一時周波数が回復傾向
〔3〕ブラックアウト(大規模停電)の発生:03時24分〜03時25分(1分間)
①苫東厚真1号機停止。再び周波数低下
②周波数低下により負荷遮断
③周波数低下による過励磁注5で、知内(しりうち)1号機、伊達2号機、奈井江1号機が停止
④周波数低下により水力等が停止
⑤北海道エリアに電源がなくなったことから北本連系設備が停止
⑥大規模停電(ブラックアウト)発生
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以上、地震発生後からブラックアウトまで、「平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会」の資料を中心に解説した。
今後、同委員会は、2018年10月中をめどに中間報告を発表する予定となっているが、このような調査・検討が今後の教訓として生かされ、電力システム改革に向けて大きく貢献することを期待したい。
編集部ではこれらの検証結果について、引き続き掲載していく。
▼ 注4
電力広域的運営推進機関、地震発生からブラックアウトに至るまでの事象について、2018年9月21日
▼ 注5
過励磁:発電機のコイル(界磁巻線)に電流が過剰に流れることを言う。過励磁によって発電機の一部が過熱し、壊れる可能性がある。