データセンターにおける省エネ:下流側からの削減が重要
ロビンス博士は、新しいデータセンターをつくる場合は、図7に示すように、下流側(ユーザー側)から省エネを開始することが重要であると指摘し、これによって大幅なエネルギーの削減が可能となったと述べた。
図7 データセンターの場合:データセンタ―の下流側から省エネを開始する
出所 エイモリー・B・ロビンス、「抜本的な効率化・低コスト化のための統合的設計」、2018年10月5日
具体的には、下流側から上流側に向けて、次のような問題を整理して示した。
ビジネス・プロセス(ビジネス処理)の問題 ⇒ 応用の問題 ⇒ 活用方法の問題 ⇒ サーバの問題 ⇒ データセンターの問題 ⇒ エネルギー調達の問題
この流れの中で、次のような削減(省エネ)が可能となる。
- まず、不要なソフトを整理し、すべての計算処理サイクルが必要かどうかを確認する。これによって、非効率なビジネスプロセスを削減し、さらに非効率で価値のないアプリケーションを10〜40%程度、削減する。
- IT機器の内部ロスを75%削減する。これによって、不十分な活用(計算処理や貯蔵など)を85〜97%削減する。
- データセンターのサポートの間接費を90%削減する。これにはUPS(Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置)分野を15%、照明分野を4%、冷却分野を33%削減する。
- 有用性のロスを約50%削減する。具体的には、発電所との電力調達分野で67%、電力の送電分野で10%程度削減する。
これによって、上流部門では従来に比べて100倍くらい大幅に節減ができるようになる。RMIが設計した最新のデータセンターを例に挙げると、RMIのレコメンデーションをすべて実施した場合、エネルギーは95%削減でき、投資資本コストを半分に抑えることができた。ただし、RMIのレコメンデ―ションをすべて受け入れられなかった保守的なユーザーの場合は、同じ資本コストで効率を3倍程度しか高められなかった。
統合的な建築設計の原則と効率化
ロビンス博士は、効率化のために建物を設計する場合の「統合的な建築設計の原則」を、自身の教訓から次のように整理した。
- 建物の最終用途を定義すること。建物は暑さを感じることはできないのに、なぜ建物を冷やすのか?
- 建物を個々の要素や部品ではなく、システムとして最適化すること。例えばスーパーウィンドウなどの高コストの窓でも、全体の建設コストの削減につながる。効率化によって空調の必要性が縮小または不要となり、資本コストを節減する代わりに効率化にお金をかけられる。
- 下流側や、使用の時点から節約を始め、上流の資本コストを抑えるようにすること。
- 正しいステップを正しい順序、正しいタイミングで行うこと。
- (1)〜(4)を達成してエネルギー効率を実現できた場合は、その報酬を受けること。
以上のほか、ロビンス博士は、効率化のための設計を行ううえで、「無理」「無駄」「ムラ」を省き、量よりも質を、アクティブよりパッシブを重視した設計が重要であることを強調した。