完全仮想化クラウドネイティブネットワーク
楽天モバイルは、NTT、KDDI、ソフトバンクに次ぐ第4の移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)として新規参入し、2019年10月からモバイル通信サービスを開始する注3。
表1 楽天モバイルネットワークのプロフィール(敬称略:順不同)
今回設立されたラボは、商用向けの4G(LTE)と5G(NR)を同一プラットフォームで再現できる設備を整え、2020年から日本でも本格化する5G商用サービスに対応可能な「5Gレディ」なラボとなっている。特に5Gは、従来のモバイルが「人と人の通信を基本」としていたツールであるのに対し、「あらゆるモノや人がつながるIoT時代」を拓く技術として国際的に期待が高まっている。
〔1〕ラボは「5Gレディ」な構造
楽天モバイルは、すでに2019年2月、世界初のエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークに関する実証実験を成功させ、現在、2019年10月からのモバイル通信サービスの開始に向けて、通信ネットワークや基地局を急ピッチで構築している。
公開された「楽天クラウドイノベーションラボ」のインフラストラクチャは、
- 無線アクセスネットワーク(RAN。端末から基地局までのネットワーク)から
- コアネットワーク(基地局からのデータをルーティングするなどの中核的なネットワーク)
までが、すべて汎用サーバを用いて完全に仮想化されており、このラボでエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネットワークを再現できる仕組みとなっている。
具体的には、ネットワークとサービスオペレーションの双方がエンドツーエンドで自動化された、世界初のクラウドネイティブネットワークだ注4。このラボのエンドツーエンド試験設備と商用ネットワークを連携させることによって、商用ネットワーク設備のバグ(不都合など)を早期に発見したり、短期間に新サービスを提供したりできるなど、柔軟で品質の高い商用ネットワークを実現できる。
写真1 楽天クラウドイノベーションラボについて語る三木谷 浩史氏(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)
出所 編集部で撮影
〔2〕最後発だからこその強み:5Gと4Gを同じネットワーク上に構築
完成披露内覧会で挨拶に立った楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史氏(写真1)は、「今まさに5G時代がそこまで迫り、モバイルビジネスが違う次元に進もうとしています。そのような中で、楽天モバイルは、旧来型のネットワークではなく、最初から5G型(5Gレディ)のネットワークを構築し、その上に4Gネットワークを乗せていくという新しい形で事業を進めています」と語った。
さらに、最後発で移動通信事業に参入することに対しては、「歴史のある他の通信事業者さんは5Gと4Gを違うネットワークとして構築しなくてはなりません。楽天モバイルは、IT企業の強みを活かして、完全に仮想化したクラウドネイティブなネットワークによって、5Gと4Gを同じネットワーク上に構築できます。しかもこのラボと実サービスしている商用ネットワークを連携させ、不都合が発生した場合には、リアルタイムに対応できることも大きなアドバンテージです」と、世界で初めてのクラウドネイティブの5Gネットワークへの意気込みを語った。
同ラボの試験設備は、従来の「開発から新サービス提供までに長い時間と高いコストをかけて商用ネットワークを展開する手法」に比べて、
- 小規模なソフトウェア単位で、短期間に自動的に試験を繰り返す手法を採用。これによって、試験期間の短縮とコスト低減を実現できる
- 新サービスを展開した際に発生するネットワークの不具合を低減でき、高品質で安定したサービスを継続的に提供できる
などが可能となる。