[特別レポート]

5Gの次を見据えた世界の最新6G戦略

― 積極的に展開する日米欧の取り組み ―
2021/04/11
(日)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

世界的に5G導入の動きが進んでいる中、、国際的な移動通信システムの標準仕様を策定する「3GPP」では、リリース17(5Gの拡張版)の策定が進んでいる。そのような中、各国は次の6G(第6世代)の早期導入に向けた取り組みを本格化させている。
日本では総務省による「Beyond 5G推進戦略懇談会」によって「Beyond 5G推進戦略 −6Gへのロードマップ−」(注1)が2020年6月に公開され、Beyond 5G(6G)実現に向けたロードマップが整備された。同様な動きは、米国や欧州などでも進んでいる。
ここでは、日本、米国および欧州の6Gへの取り組みを中心に、世界における取り組みの最新動向を整理する。

3GPPによるリリース17策定スケジュール

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大でさまざまな制約がある中、世界中で5Gの導入が進んでいる。5Gの導入と並行して5G移動通信システム仕様を策定する国際団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)では、現在、リリース15(5Gの基本仕様)、リリース16(5Gのフル仕様)に続いて、リリース17(5Gの拡張仕様)の策定に取り組んでいる。しかし、この取り組みもCOVID-19によって大きな影響を受けている。

 3GPPの2020年12月14日付けのプレスリリースでは、3GPP リリース17を策定するための新たなタイムライン(予定表)を発表した。これによると、3GPP リリース17策定の新たなタイムラインは、2021年6月までは、対面ではなく遠隔会議によるリモートワークが主流になるという想定で検討されている。リモートワークによるオンライン会合が主流となると、作業の結果をまとめるためのより多くの時間が必要となることから、新しいスケジュールを公表している(図1)。

図1 3GPPリリース17の標準仕様策定のスケジュール

図1 3GPPリリース17の標準仕様策定のスケジュール

ASN.1:Abstract Syntax Notation One、抽象構文記法1。端末とネットワーク間でやり取りするメッセージのフォーマット(ビット列)を定義する言語。これにより、通信相手とのデータ表現形式の違いを意識しないで通信できるようになる
OpenAPI:Open API Initiativeによって策定されているオープンなAPI(Application Programming Interface)を記述するためのフォーマット仕様〔以前はSwagger(スワッガー)とも呼ばれていた〕
出所 Release 17 timeline agreed

 新しいスケジュールによると、リリース17の仕様策定は、次のスケジュールで進められていく。

  • 2021年6月(第92回全体会議):リリース17 ステージ2(機能仕様)凍結
  • 2022年3月(第95回全体会議):リリース17 ステージ3(プロトコル仕様)凍結
  • 2022年6月(第96回全体会議):リリース17 プロトコルコーディング凍結(ASN.1, OpenAPI)

 なお、変更されたのは作業スケジュールのみで、リリース17の作業内容(Work Item)については、2019年12月の第86回全体会議で決まったものから変更はない注2

世界における6Gに関する取り組み

 5Gの仕様策定が進められている中、世界中の国や企業は5Gの次を見据えた、「6G」に関する取り組みを積極的に行っている。世界における6Gの取り組みを整理したものとしては、総務省が開催している「Beyond 5G推進戦略懇談会」の第1回の会合(2020年1月27日開催)の配布資料中にある図2が、よく知られている。

図2 世界における6G関連の取り組み

図2 世界における6G関連の取り組み

出所 総務省、「5G及びBeyond 5Gに関する現状」(Beyond 5G 推進戦略懇談会)、令和2(2020)年1月

 その後、日本においても「Beyond 5G推進戦略懇談会」での取り組みが進み、2020年6月30日には「Beyond 5G推進戦略 −6Gへのロードマップ−」(以下、「推進戦略」)が公表された。また、同年12月18日には、Beyond 5Gを積極的に推進するための産学官の取り組みである「Beyond 5G推進コンソーシアム」(図3)が立ち上げられるなど、さまざまな取り組みが行われている注3

図3 日本におけるBeyond 5Gの推進体制とBeyond 5G推進コンソーシアムの位置づけ

図3 日本におけるBeyond 5Gの推進体制とBeyond 5G推進コンソーシアムの位置づけ

出所 https://b5g.jp/


▼ 注1
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000364.html

▼ 注2
例えば、52.6〜71GHzの高周波帯へ5G NRを適用する検討をはじめ、エッジコンピューティング/ネットワークスライス/V2X等の拡充、一般的な5G端末よりもシンプルで低コストな端末の開発(RedCAP:Reduced Capability New Radio、軽量なNR規格)の検討、NPN(非公衆5G網、例えば日本のローカル5G/プライベート5G等)の拡充等の作業項目がある(URL参照)。https://www.3gpp.org/release-17

▼ 注3
総務省は「Beyond 5G」という呼称を使っているが、本稿では他国や企業の呼称とあわせ日本の具体的な戦略を表す場合以外は「6G」という呼称に統一する。なお、この「Beyond 5G」という呼称については、総務省の「Beyond 5G推進戦略懇談会」が公表した「Beyond 5G推進戦略骨子」に対する意見募集を行った際、なぜ「6G」と表記しないのかという意見が出ていた。これに対して、総務省は「6G」の技術的要件が、ITU-Rなどで国際的に定められていない点と、「6G」に閉じない広い視野で戦略を推進する意図があるという点を述べている( https://www.soumu.go.jp/main_content/000693966.pdf 参考)。その後公表された「Beyond 5G推進戦略」には、「6Gへのロードマップ」という副題が追加されている。

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