さらに普及を遂げ身近なものになる直流マイクログリッド

― 島根県松江市に26カ国270名が結集 ―

26カ国270名が参加した「第3回IEEE ICDCM(国際直流会議)2019」

 「水の都」とも言われ、国宝「松江城」を擁する島根県松江市で、第3回 IEEE 直流マイクログリッド国際会議 「ICDCM 2019」が、電気学会D部門、電子情報通信学会、電気設備学会の協賛を得て、2019年5月20日~23日の4日間、開催されている(写真1~3)。

写真1 ICDCM 2019の会場となった島根県松江市「くにびきメッセ」(島根県立産業交流会館)の外観

写真1 ICDCM 2019の会場となった島根県松江市「くにびきメッセ」(島根県立産業交流会館)の外観

出所 編集部撮影

写真2 開催場所である島根県松江市の案内図

写真2 開催場所である島根県松江市の案内図

出所 編集部撮影

写真3 会場入り口のウェルカムボード

写真3 会場入り口のウェルカムボード

出所 編集部撮影

 半導体エレクトロニクスの発展と太陽光発電などの普及に伴って、パソコンやスマートフォン、ICレコーダー、デジカメをはじめ、蓄電池(DC)を搭載した自動車、サーバの集合体でもある(クラウドの中核でもある)データセンターに至るまで、市場には直流によって駆動する機器やシステムが普及し、溢れている。


 直流マイクログリッドの普及により、現在、交流(AC)電源を直流(DC)電源に変換する際に発生する膨大なエネルギー損失をなくして効率的に利用できる。これは脱炭素化社会を目指す面からも、社会的に期待が高まっている。


 このような背景のもとに開催されたICDCM 2019は、全世界の直流マイクログリッド(直流配電網)およびそれに関連する技術分野の研究者や専門家が結集し、直流システムや直流技術の研究開発と普及向上を目的として2年ごとに開催される直流の国際会議である(表1、表2)。

表1 第3回IEEE ICDCMのプロフィール(敬称略)
項目 内容
名称 第3回 IEEE 直流マイクログリッド国際会議 (通称:IEEE 国際直流会議)
英文名称:The 3rd IEEE International Conference on DC Microgrids
(※第1回:2015年、米国・アトランタ、第2回:2017年、ドイツ・ニュルンベルク)
会議の趣旨 全世界の直流マイクログリッド(直流配電網)およびその関連技術分野の業界の研究者や専門家を集め、直流システムおよび技術の使用に関する理解と能力の向上を目的としている。
主催 IEEEパワーエレクトロニクスソサイアティ(PELS)
(IEEE PELS:IEEE Power Electronics Society)

IEEE PELS President(2019~2020年):Frede Blaabjerg教授(デンマーク オールボー大学(Aalborg University)
会期 2019年5月20日(月)~23日(木)
会場
(所在地)
くにびきメッセ、〒690-0826 島根県松江市学園南 1-2-1
協賛 電気学会 産業応用部門(D部門)、電子情報通信学会 通信ソサイエティ、電気設備学会
会議参加数 26カ国から270 名
併設展示会 出展小間数:23小間
運営        ICDCM 2019 国内委員会
  • ICDCM 2019 Chair:廣瀬圭一(NEDO)
  • ICDCM 2019 Vice-Chair:雪田和人(愛知工業大学)
  • ICDCM 2019 テクニカルブログラム委員会Chair:松井信正(長崎総合科学大学)

出所 第3回IEEE ICDCMの各種資料から編集部で作成

 

表2 第3回 IEEE ICDCMの論文数の内訳
論文概要の投稿数 185件(本文執筆前の論文の概要)
採択率 67%(審査の結果33%が不採択)
   発表形態①:Oral Papers 65件(スライドを使用した口頭発表)
  発表形態②:Poster Papers 56件(1枚のパネルを使用した発表)
  キャンセル数 4件(著者の都合による辞退)

出所 ICDCMの資料をもとに編集部で作成

さらに普及を遂げ身近なものになる直流マイクログリッド

 今回、ICDCM 2019の主催国となり、そのチェア(議長)である廣瀬圭一氏(写真4、NEDO)は、「第1回目の米国のアトランタ(2015年)、第2回目のドイツのニュルンベルク(2017年)に続く第3回目の日本での開催は、これまでの記録を更新する26カ国から270名に参加していただきました」と参加者への謝意とともに、「投稿された論文数も質的な面からも最高に達した」と、世界的に直流への関心と期待が高まっていることを述べた。

 続いて、ICDCM 2019を主催しているIEEEパワーエレクトロニクスソサイアティ(PELS:IEEE Power Electronics Society)のプレジデントであるFrede Blaabjerg教授(写真5、デンマーク オールボー大学)は、主催国である日本の運営委員会に謝意を述べた後、「エレクトロニクスの急速な発展と普及によって、現代社会はますます電化されてきています。そして、私たちはすでにたくさんの直流ベースのマイクログリッド(直流配電網)を使用するようになってきています。今後、パワーエレクトロニクス技術がさらに進化・発展していくに伴って、直流マイクログリッドはさらに普及を遂げ、身近なものになっていくでしょう」と語った。

写真4 ICDCM 2019 Chairの廣瀬圭一氏(NEDO)

写真4 ICDCM 2019 Chairの廣瀬圭一氏(NEDO)

出所 編集部撮影
 

写真5 IEEE PELS PresidentのFrede Blaabjerg教授(デンマーク オールボー大学)

写真5 IEEE PELS PresidentのFrede Blaabjerg教授(デンマーク オールボー大学)

出所 編集部撮影

直流マイクログリッドの信頼性やレジリエンス、重要性を示した2つのプレナリーセッション

 プレナリーセッションでは、さくらインターネット株式会社の創設者兼社長である田中邦弘氏(写真6)が、2018年9月6日に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震で起こった北海道全域ブラックアウトの際にも、完全に機能した同社の石狩データセンターの直流電源システム(写真7)の結果について語り、最も信頼性が高く安定していることを証明した。

写真6 さくらインターネット代表取締役社長 田中邦裕氏

写真6 さくらインターネット代表取締役社長 田中邦裕氏

出所 編集部撮影

 

写真7 さくらインターネットの石狩データセンターの直流電源システム

写真7 さくらインターネットの石狩データセンターの直流電源システム

出所 田中氏講演資料より(編集部撮影)

 続いて、Lawrence Berkeley National LaboratoryのSenior Scientific FellowであるChris Marnay氏(写真8)は、より分散した構造へと進化しているマイクログリッドは、ヘテロジニアスな電力品質、信頼性およびレジリエンスの可能性をもつとして、マイクログリッドの背景およびマイクログリッド研究開発のフェーズ(写真9)、ボッシュとシルバークラウドワイナリー2つのカリフォルニアの直流システムに関する事例、国際マイクログリッドシンポジウムなどについて講演を行った(写真10)。

 ICDCM 2019では各セッションのほか、23の併設展示会も行われている。同会議の詳細については、本誌『インプレスSmartGridニューズレター7月号』(6月30日発売)にて掲載する予定である。

写真8 Dr. Chris Marnay(Senior Scientific Fellow, Lawrence Berkeley National Laboratory)

写真8 Lawrence Berkeley National LaboratoryのSenior Scientific Fellow Dr. Chris Marnay

出所 編集部撮影
 

写真9 マイクログリッド研究開発のフェーズ1

写真9 マイクログリッド研究開発のフェーズ1

出所 Dr. Marnayの講演資料より(編集部撮影)

 

写真10 プレナリーセッションの会場の様子 写真10 プレナリーセッションの会場の様子 出所 編集部撮影
 

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