TransActiveGridプラットフォームの実証システムの構成
日本では、2019年11月から住宅用太陽光発電のFIT期間が終了し始め、2019年には53万件(200万kW)が卒FITとなり、以降、2023年には累積で165万件(670万kW)が卒FITする。
こうした卒FITによる大量の太陽光発電市場において、TransActiveGridプラットフォーム(P2P電力プラットフォーム)の活躍が期待されている。
今回の丸紅のTransActiveGridプラットフォームの実証システムは、北海道から関東甲信越エリアまで広範囲にわたり複数カ所で行われている。具体的には、
- コンシューマ側としては、丸紅グループ会社であり、かつ丸紅新電力の顧客(法人)が参加し、
- 発電側としては、丸紅が保有する太陽光発電などが選定された。
実証実験は、工場などの各コンシューマ側と各再エネ発電所側に、それぞれ1件につき1台のTAGe端末が設置された(図3)。
また、図3に示すように、「TAGe G2とクラウド側のTransActiveGridプラットフォーム」間の通信は、LTEで行われている。Wi-Fiも検討されたが、コンシューマ側も発電側も郊外にあり、Wi-Fi設備が十分でないなどの理由からLTEが選択された。
ビジネスに向けた今後のロードマップ
〔1〕実証期間は2019年9月まで
今回の共同実証実験では、2019年の2月〜3月に、前出の図3に示すような実証実験用の設備はすべて設置完了した。実証は3月から行われており、上半期の9月までの半年を実証期間としている。この期間に、電力の売買に関するパラメータ(設定値)の妥当性や、スマートフォンからの実際の電力取引の参加への仕組みなどの機能を検証する。最終的には実験参加者からのフィードバック情報をもとに、インタフェースなど個人も含むエンドユーザーが容易に利用できるよう、改善していく。
〔2〕モニタリングソフトも開発
また、今回は、実証実験全体をモニタリングできるソフトも開発されている。これによって、どのような参加者がどのように電力を利用し、どの程度電力を発電したか、どのように電力の取引が行われたかなどのほか、システム全体の動作や取引市場がどのように機能したのかなどの状況を、LO3 側からも丸紅側からもモニタリングできる。
〔3〕ビジネス展開への検討
2019年9月末頃を目処にこの実証実験はいったん終了する。その後は、今回の実証結果をベースに商用に近い形のトライアルを行い、2019年11月から始まる卒FITの電源をこの仕組みにどのように取り込んでビジネスにしていくか、などが検討される。
現在、LO3は、全世界でおよそ10カ所のサイトで実証を実施中または計画中だが、国によっては法規制からP2P電力取引を実現するには厳しい場合もある。そのため、法規制の緩和を求めながらも、法制度に縛られずに実用化していく道も検討されている。卒FIT時代直前の日本で、どのようにP2P電力取引がビジネスフェーズへ展開できるか、注目を集めている。
◎取材協力(敬称略)
丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部
大串 康彦(おおぐし やすひこ)
LO3 Energy Inc. 事業開発・プロジェクト管理(日本担当)