[直流時代の到来!]

直流時代の到来!<前編>さくらインターネットの直流給電システム(HVDC)

― 北海道胆振(いぶり)東部地震のブラックアウトにも60時間稼働し続けた「北海道・石狩データセンター」の教訓 ―
2019/07/01
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

データセンターの3つの電源を優先順位に従って利用

 さらに、再生可能エネルギー(太陽光発電)の普及を背景に、データセンターの電力として、いち早く太陽光発電(出力:200kW)を採用したことも画期的なことであった。

〔1〕太陽光発電所の直流電力をデータセンターへ直結

 太陽光発電所は直流で発電するため、発電した電気をそのままデータセンターまで直流で送電できる。

 「図4に示すように、当社の石狩データセンターは、給電状況を自動で判別し、3つの電源を優先順位に従ってサーバに供給しています。まず、①日が昇れば太陽光発電からの電力(DC380V)を最優先で供給し、次に、②日が暮れれば商用電源(DC340V)で、最後に③商用電源も太陽光もなければバッテリー(非常電池、DC264V)で、データセンターに給電する仕組みになっています。これが一番効率的だろうと考えました」(田中氏)。

図4 優先順位に従ってサーバに供給される3つの電源

図4 優先順位に従ってサーバに供給される3つの電源

出所 https://www.sakura.ad.jp/information/pressreleases/2015/08/10/90107/

〔2〕世界初の超電導直流送電も導入

 さらに、「このような電源構成は、現在、すでに導入し運用しています。1号棟については19ラックだけですが、2号棟については120ラックに拡大しました(表2)。この2号棟(DCサーバ:3,100台設置)は、図4、図5に示すように太陽光発電所と直結され、直流電圧380V(HVDC)で電力が供給されています。このため、PCS(パワーコンディショナー)が不要であることも特徴となっています。さらに、この太陽光発電所とデータセンターの間は、図5に示すように、世界初の直流超電導送電注7をしていますので、送電ロスも少なく変換効率もかなり優秀です」(田中氏)と、先進技術を採用したデータセンターであることが披露された。

図5 太陽光発電所からデータセンターへの直流超電導送電の仕組み

図5 太陽光発電所からデータセンターへの直流超電導送電の仕組み

出所 https://www.sakura.ad.jp/information/pressreleases/2015/09/24/90112/

表2 石狩データセンターの設備

表2 石狩データセンターの設備

出所 2019年5月21日、田中 邦裕「第3回IEEE ICDCM(国際直流会議)における講演資料」(Plenary/Keynote Speech)をもとに編集部作成

〔3〕3社のDCサーバを4,200台導入

 石狩データセンターでは、NEC、富士通、ファーウェイの3社のサーバが使われており、すでに2万台以上が稼働している。そのうちの約2割にあたる4,200台がDCサーバだ(図6)。これは、日本のDCサーバとしては大きな規模の台数となっている。DCサーバは効率が良い(約15%の省電力)だけではなく、電源の故障がほぼなくなるというメリットもある。

図6 石狩データセンターに設置された3社のDCサーバ

図6 石狩データセンターに設置された3社のDCサーバ

出所 田中 邦裕「第3回IEEE ICDCM(国際直流会議)における講演資料」(Plenary/Keynote Speech)、2019年5月21日、編集部撮影


▼ 注7
直流超電導送電:極低温にすると電気抵抗がゼロとなる超電導体を用いて行う送電で、送電ロスの低減や送電容量の増大ができる(2015年9月から送電開始)。超電導送電システムは−196℃〔絶対温度77 K(ケルビン)〕の極低温の液体窒素で冷却され、石狩超電導・直流送電システム技術研究組合によって実証されてきた。同研究組合は、千代田化工建設、住友電気工業、中部大学、さくらインターネットによって2014年1月に設立された。

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