カーボンニュートラルな都市環境を目指した直流技術の研究開発
写真1 ドイツ アーヘン工科大学 デ・ドンカー教授
出所 編集部撮影
ドイツのアーヘン工科大学(表1)のデ・ドンカー教授は、パワーエレクトロニクス技術などの発展を背景に、同大学における再エネや電力系統についての研究を推進している。ドイツでは、特に直流技術をCO2の問題解決に貢献する重要技術として位置づけている。
高圧分野における直流技術(HVDC:High Voltage Direct Current)は、すでに国際的な研究が活発に行われているため、デ・ドンカー教授は、今回、特に中圧の直流(Medium Voltage Direct Current)を中心に講演した。
〔1〕直流の分類イメージ
最初に、講演内容を理解するために、図1に直流に関する分類のイメージを整理して示す(NEDO 加藤寛氏の同日の講演資料より)。
図1 直流の分類イメージ
出所 加藤寛、「直流送電技術におけるNEDOの取り組み」、2019年6月4日
図1に示すように、①高圧直流(HVDC。例:100kV以上の長距離直流送電網)、②中圧直流(MVDC。例:5kVのデータセンター、1.5kVの電車など)、③低圧直流(LVDC。例:12V〜42VのEV、電子機器など)のようなイメージとなる。
〔2〕目標はカーボンニュートラルの実現
ドイツは、電力エネルギー分野において、世界に先駆けてエネルギー転換を始めた注2国の1つであり、社会全体がカーボンニュートラ
ル注3という目標に向かって取り組んでいる。
それらを実現するための技術的な要件として、特にエネルギー貯蔵技術や、フレキシブルなメッシュ型(網目状)の電力系統を開発することが重要な課題となっている。これに加えて、新しい直流送電システムのコスト削減も重要な課題として浮上している。
▼ 注1
講演テーマは以下の通り。
・ドイツ アーヘン工科大学教授 デ・ドンカー氏(Prof. Dr. Rik W. De Doncker)、「直流技術 ―カーボンニュートラルな都市環境を目指して」
▼ 注2
ドイツ政府は、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発の深刻な事故を契機に、ドイツ国内の脱原発の世論を受けて、第13次原子力法改正法案(脱原発法案)を同年6月6日に閣議決定し、同法案は同年6月30日に連邦議会、7月8日に連邦参議院を通過し、成立した。これによってドイツ国内の原発は2022年以降すべて運転を終了することとなった。
▼ 注3
カーボンニュートラル(Carbon Neutral):炭素中立(CO2排出ゼロ)。人間の生活や生産活動によって排出されるCO2量と、植物などが吸収するCO2量が同じである状態にして、大気中に炭素(CO2などの室温効果ガス)を増加させないこと、すなわちCO2の排出を実質ゼロにすること。