デジタルインダストリーズ分野への期待
ガス&パワー事業の分社化によって、シーメンス本体には、「スマートインフラストラクチャー」と「デジタルインダストリーズ」の2事業が残る。
前者は、都市インフラビジネスを中心に展開し、後者は、ファクトリーオートメーション(FA)やモーションコントロールなどのビジネスを中心としたインダストリアルIoT(IIoT)分野の進展を支援する事業である。
〔1〕デジタル化への投資
シーメンスは、事業戦略を立てる場合、市場環境にできるだけ早く適応できるように、まず市場予測から入ると、藤田 研一氏(シーメンス式会社 代表取締役社長兼CEO)は語る。
具体的には、将来の市場を形作るグローバルメガトレンドとして、人口動態をはじめ、都市化、デジタル化、グローバル化、気候変動など多様な国際状況を予測・分析し、その基礎データを検証しながら、それが市場にどのような影響を与えるかを考えて、事業戦略の策定や事業のポートフォリオの組み替え(現状の事業種類の見直し)などを行うという。
シーメンスは予測に基づいて、過去15年間でデジタル化へ1兆円強の投資を行い、事業計画の達成に必要なさまざまな企業の買収や統合を行い、早くからデジタル化への投資を開始している(図5)。
図5 シーメンスのデジタルビジネス
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
〔2〕産業用のオープンIoTオペレーティングシステム「MindSphere」(マインドスフィア)
現在、シーメンスでは、現場の多様なデバイスからのデータをクラウドに送り、アプリケーションによって処理され管理・制御されるIoTの動きに対応して、デジタルファクトリーをはじめエネルギー管理、スマートシティ、ヘルスケア、風力発電などに至るまで、多彩な分野の多様なIoTデバイスを接続できる環境を提供している。
このような環境を実現するため、シーメンスは、クラウドと連携した産業用のオープンIoTオペレーティングシステム「Mind
Sphere」(マインドスフィア)を開発し、日本では2017年4月から提供を開始している(グローバルには2016年3月)が、現在では、図6のように、各分野のパートナー企業と連携している。
図6 日本における「MindSphere」(マインドスフィア)のパートナー企業
出所 シーメンス株式会社、2019年6月21日記者会見資料より
MindSphereは、すでに設置されている製造現場のデバイス機器などの「多様なモノ」をデジタルの世界と結び付け、付加価値の高い産業ベースのアプリケーションやデジタルサービスの開発を可能とし、新しいビジネスを展開できるように支援している。またAWS(Amazon Web Service)などのクラウドとも連携しているため、グローバルなスケーラビリティも備えている。